無意識の王子的言動

第53話


「──まやちゃんって頭いいの?」


 テスト二週間前の放課後。神永君と(強制的に)帰っていると、発された言葉。


「あんたよりは確実にね」


 彼の点数なんて知らないけど大体は分かる。だって人の話は聞かないし遮るし、話が噛み合わないことも多い。


 人の嫌味を素早くポジティブに変換できるところは頭の回転が速いのかもしれないけど。授業中は私に永遠とメッセージを送ってくるし、送ってこない時は大体「寝てた!」って自分で言ってるから。



「え?なんで俺がバカだって知ってるの!?まやちゃんストーカー!?」


 また何かを期待するキラキラした顔してるけどさ。


 ……ストーカーにストーカー呼ばわりされたくない!!


「殴るよ」

「ごめんなさい」


 調子に乗ってるこの男を黙らせるのも朝飯前になってきた。


 一番効果的なのは「嫌いになるよ」なんだけどそれを言ったら「じゃあ今は好きってこと?」なんて自惚れるからなるべく使わないようにしている。



「見てれば分かるわ」


 そんな嫌味も、ほら──。


「そんなに俺のこと見てるの?」


 彼のポジティブ思考でなんともロマンティックな展開に早変わり。


 おかしいよね、うん。知ってる。



 私の顔を覗きこんでくる神永君。こっちの意図することが全く伝わってない。


「ね、まやちゃん。提案なんだけど──」

「却下」


 彼の言葉に被せるようにバッサリ言った。


「まだ何も言ってない!!」


 頬を膨らませている神永君は可愛いけどね?

「あんたといるとロクなことないじゃん」


 ……あまり君とは関わりたくない。

 手でシッシッと追い払うようにしてみれば、耳が垂れた子犬のような顔をする卑怯極まりない神永君。


「べ、勉強教えて……?」


 そして人の話を聞け。だから授業もわかんないんだよ。


「私、人に教えられるほど頭良くないし」


 彼の提案に呆れながらそう言って逃れようとするけど


「一緒に勉強してくれるだけでいいから!!」


 手を合わせてお願いする彼にため息しか出ない。

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