第31話
――流れてほしくない時間ほどはやく流れてしまうのはどうしてだろう。
やって来てしまった放課後。なるべく人がいない教室で話したいから、しばらく自分の教室で待って人気がなくなったころ、自分の荷物を持って神永君たちのクラスへと向かう。
……もちろん、その足取りは重い。バッグってこんなに重かったっけ??
「──ついてしまった」
のろのろと歩いていたけれど、所詮は同学年。同じ階に教室はあるわけで、あっという間に着いてしまった。
大きく深呼吸して気持ちを落ち着ける。
……なんでこんなに緊張してるんだろう。
さっさと話をつけて帰ろうと、腹を決める。そして、そっと教室の中を覗くと二つのシルエット。
すぐ私に気がついて手を振ってる神永君の友だちと──机に突っ伏している神永君。
顔をうずめているから、もちろん私には気が付いていない。お昼に聞いたことは本当だったんだ……。
友だちくんがしーっと人差し指を口に当てて「静かに」と合図をしつつ手招きをする。
……難しい注文だな。
幸いにもドアは開いてたから、物音をたてないようにそろりそろりと忍び足で神永君の机の近くまで行く。
全く気付く様子のない彼に
「なあ、凛。そろそろ元気出せって」
そう話し始める友だちくん。
「……むり。俺……もー生きていけない……」
神永君は、掠れた声でそう答える。顔は、上げない。
「そんなにショックだったわけ?」
そう聞きながら私に目で合図する。
……これが神永君の本音ってこと?
「だってまやちゃん、俺のこと大嫌いって……」
……ほんとに、あんなことで??さすがに、バツが悪いんだけど。
眉をひそめる私に、苦笑いする友だちくん。「だから言ったでしょ?」とでも言いたそうな顔だ。
「死んじゃう……どうしよ……」
──にしても、うじうじと……。自分がしたことが原因なんだけど、ちょっとイライラしてきた。
……そんなことで死なねえよ!!!お前はウサギか!!
友だちくんは眉間にしわを寄せる私を見て困ったように頭をかく。
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