第30話


 私の知らないところでもそんな恥ずかしいこと言ってたんだね。ごめんね、友だちくん。


 ──でも、むしろこれが神永君以外の人だったなら……なんの迷いもなく拒絶できるのに。思う存分、貶してやるのに。


 イケメンって厄介だ。



「──遊びなんかじゃないから。凛を、信じてあげて……??」


 優しい目で私を諭すように告げる友だちくんは、本当にいい人だ。あんなぶっ飛んだ人の親友だもんね。いい人に決まってる。


 だけど、“信じる”という言葉はまだ私には重すぎて胸がぎゅっと締め付けられた。


──そんな簡単に信じられる?どうして私を好きになったのかもわからない。どんな人なのかもイマイチ掴めない。知らないことばかりの彼。


 ……ううん、べつに知りたいとは思わないよ。だって私は彼のことが「苦手」なんだもん。


「……信じるかどうかは、まだ決められない。……でも、今日は私も悪いことしちゃったし……ちゃんと、話すよ」


 ここで「無理。もう二度と私に関わらないで」ぐらい言っちゃえばよかったのかもしれない。だけどそれを言えないのが私の甘いところ。恋愛において、いつも失敗しちゃうところ。


 私の言葉に神永君の友だちは安堵の表情を浮かべた。


「あー、よかった! これで、凛が生き返る!!」


 ……ちょっと、彼は今どういう状態なの。


 神永君の今の様子は聞いたけど「生き返る」だなんて聞き捨てならない。


 ……死にそうってこと?私の「大嫌い」で?


 喉がぎゅっと詰まるみたいになって、苦しくなる。それを誤魔化すように唇をかみしめて、ごくりと唾を飲み込んだ。


「放課後、俺が凛を引き留めておくから。SHR終わったら教室まで来てくれる?」


 ……ああ、面倒臭い。本当に、彼と関わるとロクなことがない。




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