第32話
「まだ何も始まってないのに、もう終わっちゃったのかなあ……」
弱気すぎる彼の言葉に
「……馬鹿じゃないの」
そう発してしまった言葉はもう戻らなくて。
「……????……うええええ!!!!!!?」
少しの沈黙の後、ガバッと起きあがった神永君。私と目が合うと驚いた表情から困惑顔になり、友だちへと説明を求める。
「どどどどどどどういうこと!!!?」
上手く舌が回っていないことからよっぽど驚いていることが分かる。いつものオーバーリアクションは健在だ。
「俺が呼んじゃった☆」
てへっと言わんばかりに舌を出して笑う彼は、してやったり顔。その軽い反応に神永君はうまく理解できていない様子。
「──え、まって。じゃあお前、まやちゃんと話しに行ったってこと!?俺聞いてない!!ずるい!!」
……いや、そこが重要なのか?
憐れむように私を見た友だちくん。彼の目線が「大変だね」って語っている。
「ま、仲直りの機会を作ってやった俺に感謝しろよ~」
そう神永君に言って私の肩にポンと手を置く。
「それは……ありがとう……。だけどその手を退けて!!」
バシッと私の肩にあった手を払いのけた神永君。友だちくんは「はいはい」と軽く受け流して、私に
「あとは頼んだ」
と耳打ちすると鼻歌を歌いながら教室を出て行った。
いや、頼まれても困るんですけど──。
「おい!!まやちゃんに近づくな!!」
去っていく親友の背中に叫んだ神永君はこの先どれだけヤキモチを妬く気なんだろう。このくらいで大騒ぎしてたらいつか発狂するんじゃないのか?
……いやいや。
“いつか”?私はまだ、こいつとの関係を続ける気なの?
「──ね、まやちゃん……」
友だちくんに対してぷんぷん怒っていた神永君だけど、私に向き直るとまたしゅん……としている。
「……うん」
近くにあった私の手に触れて小指をきゅっと握ってきた神永君。
「本物……だよね……?」
……偽物なわけあるか。
彼の隣の机に寄りかかると、少し距離ができてしまって握っていた彼の手がするりと落ちる。離れた温もりに神永君が寂しそうな顔をするから……こっちまで苦しくなってしまう。
「ねえ……」
彼が、話し出した。
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