第15話


 スマホに映っているのであろう「秘蔵画像」と私を交互に見比べて、数秒後には

「──ぶふっ!!!」


 “鼻を押さえてのけ反るイケメン”っていう貴重なものを見せてくれた。


 まてまてまて。だから何を見せた!!?


「なんなの!?何を見たの!?」


 カウンター越しにイケメンの胸ぐらを掴んで揺さぶるけど、一応お客さん相手だから「まやちゃん!!」って店長に怒られてしぶしぶ手を離した。


 

 ──っておい、おっさん!!!!バイト中のスマホはいいわけ!!?

 店長を睨んでみても効果なし。



 隣では神永君が廉先輩にひれ伏してる。


「ここここれ、俺にも送ってください!!お願いします!!廉さん!!」

「それはめんどい」


「うえええええ!!?」


 ……騒がし過ぎて、本気で頭痛がしてきた。


 頭を抱える私と必死でお願いする彼を見てにやりと笑った先輩。


 私は嫌な予感しかしない。



「──こーんな可愛いマヤ、一人占めしなきゃなあ?」


 そんな悪い顔で「可愛い」とか言われても嬉しくもなんともないよ。


 見え見えの挑発に誰が──。


「──ハッ!!!やっぱりあなた敵ですね!!!?一瞬でも心を許した俺が馬鹿だったああああ!!」


 ……違う意味で馬鹿だと思うよ、君は。

 なぜ挑発にのってしまうのだ残念イケメンよ。


 (性格の悪い)廉先輩はまた大笑いして去っていった。




「……ご注文は」


 ──そして振り出しに戻る。廉先輩におちょくられて、それにも気付かずめそめそしてる神永君に声をかけると、何かを思い出したようにばっと顔をあげた。


「……廉さんに負けないように、作戦練らなくちゃ…」


 ぼそっと呟いた言葉……聞き間違いであってほしい。


「……まやちゃんに名前も呼んでもらえたし、今日はそれだけで満足!!じゃあまたね、まやちゃん!!!」



──ふざけんな!!!結局、何も注文しないのかよ!!!




 嵐のように去っていった彼の背中を見つめているとなんだかどっと疲れた。

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