第14話
「あの人のこと、名前で呼んでたもん。俺のことも呼んで??」
上目遣いでおねだりする彼は間違いなく確信犯。
──にしても廉先輩にずいぶん対抗心持ってるんだなぁ。
拒否しちゃいたいところだけど……ここで断ったらまた面倒だから。
「──神永君」
さっき思い出した名前をしぶしぶ呼ぶ。
「はうぅっ」
なんちゅう声を出してるの!!
胸に手を当てて喜びを噛み締めてる様子の彼。
「名字なのがちょっと不満だけど……!!でも!!!まやちゃんが!!……うわあああああ……もう一回!!」
名前を呼んだだけでこんなにも悶えてる「神永君」。
……辛抱しろ、マヤ。
無心になるんだ。
「……神永君」
もう一度だけ、呼びかける。するとやっぱり胸を撃ち抜かれたみたいな動作をして、今まで見た中でいちばんテンションが上がっている。
「まって、もう一回!!録音してアラームにする!!!俺朝苦手だけど起きれる気がする!!!!!」
なんて言いながらポケットを探ってるけど、絶対にスマホ出す気でしょ!?
……私の中の何かがプツンと切れた。
「──もう二度と言わない」
「ごめんなさい!!!!!!」
真っ青な顔をして平謝りする神永君を冷めた目で見ていると
「──あ、物好き君。マヤの秘蔵画像があるけど見たい?」
資材を運ぶのに後ろを通りかかった廉先輩が聞き捨てならないことを言い出す。
「ひ、秘蔵画像……。それはどのような……っ」
ガタガタと手を震わせながら、先輩を尊敬の眼差しで見つめる神永君。
さっきあれだけ敵視してたのに変わり身早いな、おい。
「──ほら」
どこから出したのか、スマホの画面を神永君に見せる。
良い子はアルバイト中にスマホを触ってはいけません。
──っていうか!!!私の秘蔵画像!?何それ!!!
「ちょ、先輩!?なんの写真ですか!?」
慌てて廉先輩からスマホを取り上げようとする。
でも既にそれは神永君の手に渡っていて、身を乗り出してもカウンターが邪魔をして手が届かない。画面をじっと見つめる神永君。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます