第12話


「ずるいずるいずるいよ!!!!」


 ……What??



「まやちゃん、俺も叩いて!!」


 ……まて、これは誤解を生むぞ!!!!?


 ほら、隣でチラチラ私たちのやり取りを見ていたお客さんが「ブッ」って吹き出してる。



「ちょ……なにいってんの!!?」

 慌てふためく私に、隣で大爆笑する廉先輩。


「超おもしれえ!!!」

 なかなか大口あけて笑う先輩なんて見れないよ。


 笑われたことがまた彼の対抗心に火をつけたみたいで

「だってえ~~~!!」

 じたばたと暴れだす。



 今日、いつもよりお客さん少なくてよかった……!!ほんとぶっ飛んでるよ、この人!!!




「……あ。俺、資材の準備してくるわ」


 ひとしきり笑った後、先輩は仕事へと戻って行った。



 ──え!!このタイミングでいなくなるの!!?



 また、2人になる。

 なぜか目の前の男はまだ不機嫌だし……。沈黙が続く。


「──あのさ」

 このままじゃ正直迷惑だし、私から口を開いた。


「なんでそんなに怒ってるのかわかんないんだけど」


 そう言うと、少しうつむいて


「……俺だってわかんないもん」


 と言う彼。



 ……うん。そりゃ、私にもわかんないわけだわ。



「だって……まやちゃん、楽しそうに笑うんだもん……。あの人のことすきなの……??」


 突拍子もない言葉にぽかんとしてしまう。でもこいつはすごく真剣で。



「……いや、好きとかは別に──」

 私も、真面目に答えてしまう。


 すると少しほっとしたような顔になり、今度は唇を突き出して拗ねたような表情に。


「俺だって、あんなに楽しそうに笑ってくれるならいくらでも叩いてほしいよ……」


 さっきの真意はこれか……。

 何故か納得してしまいそうになったから慌てて頭を振った。

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