第11話


「──ちょちょちょちょっと!!!!俺のまやちゃんを口説かないでください!!」

「お前のじゃねえよ(即答)」


 忘れていた、こいつの存在。廉先輩も彼のあまりの剣幕に唖然としている。

 そしてすぐに何か思いついたような表情になった。


「……ああ、なるほど。彼氏か」

「違います真剣にやめてください」


 私の必死の否定、わかります?だってそれが事実だし、これからもそんなことには絶対にならない。断じて!!


「そう見えます?まあ、そうなる予定なんですけど。だから気安く触らないでくださいね!!」


 そんな私の否定も空しく、こいつはとことん空気が読めない。



 なんでこんなに話が噛み合わないのか不思議でたまらないよ。



 目の前の男の言葉にまた何か考えた廉先輩。


「──あ!店長が言ってた物好きってこいつ??」


 コラ。物好きだと?聞き捨てならんぞ、それは。



 いろんな意味を込めてバコッと先輩の肩を叩くと「いってー」と真顔で言って叩いたところをさすっていた。


 超、棒読みですけど。



「──でも、このお客様なんだろ?」


 またにやりと笑った廉先輩。当たってるところがまた悔しい……!!



「そーです、けど……」


 ふと、静かになった「奴」のほうを見る。


 ……あれ?


 その人は廉先輩を睨みつけてほっぺたを膨らましていた。


「え、なに」


 先輩はなぜ彼がこんな顔をしているのか分かっているようで

「愛されてんね~」

 なんて笑っている。


「……どういうことですか」


 と問いかけてみても肩をすくめて答えてくれない。


 私たちの会話を聞きながら彼の頬もどんどん膨らんでいく。



 ……にしても、やっぱりイケメンはなにをしても許されるんだな。


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