第5話


 ……はい?

 ほんとに何この人。怒りを通り越してあきれてくる。「付き合って」よりもタチが悪い。


 お互いのこと何も知らないのに、好きも嫌いもないだろ!!!


 ──あ、私はこいつのこと「嫌い」だけど。



「……あのさ、言わせてもらうけど」

 きょとんとするイケメン。可愛いなおい。


 でも私は騙されない!!


「あんたが何を考えてるか知らないけどさ。私みたいなのからかって楽しい?……もしかして罰ゲームでもやらされてんの?別に私じゃなくても、あんたみたいなのに群がってくる女なんて腐るほどいるでしょ。暇つぶしならその子たちでやってよね」


 きっぱりと言ってやった。これで懲りてもらわないと困る。


 自分で言っていて、グサッときた言葉もあったけど……。彼に対する罪悪感はもうこれっぽっちもなくなっていて、思ったことをストレートに言った。



「──あんたじゃないよ。凛……神永凛」


 それなのに、こいつの口から出たのはまさかの自己紹介。想像の斜め上を行きすぎてついていけない。


 ……だけどこの男の表情はいたって真面目で、言い返そうと思っても彼の瞳がそうさせてくれない。


「からかっても、罰ゲームでも、暇つぶしでもないよ。俺はただ、ずっとずっとまやちゃんに会いたかったんだ。……たしかに俺はモテる。それは否定しない。でもね……俺は誰とも付き合ったことないし女の子と話すこともめったにない。……なんでかわかる?」


「まやちゃんは知らないと思うけど……俺はね、ずーーーーっと、まやちゃんの事がすきなんだ。冷たくしても馬鹿にしてもうざがってもいい。だけど──俺の気持ちだけは信じて……」


 両肩を掴まれて、じっと見つめられたら何も言えなくなる。


 “こいつがいつから私のこと好きなのか”とか、“やっぱり初めて会ったんじゃないのか?”とか……疑問に思うことはいっぱいだったけど、今はそんなこと気にならなくて。

 ただ、目の前の整った顔立ちをまじまじと見つめるだけ。


 イケメンの真剣な顔ほど、ときめくものはない……。


 この言葉が嘘でも、本当でも。


 イケメンにこんなこと言われて、照れない女子がいるなら見てみたいわ。

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