第4話



 ──そして、20時すぎ。


 学校の制服に着替えて裏口のドアをそっと開け、隙間からあたりを見渡す。


「……よし、いないな」


 そう、あいつがいないのを確認してやっと外へ出た。


「なんだ、結局口だけじゃん」


 まあ別にいいんだけど、少し拍子抜けした。


 ひとつため息をつくと、空に向かって両手を突き出し身体を伸ばす。

「ん~~~っ」


 リラックスモードだった私の耳に入ってきた声。

「あ、まやちゃん!」


 両手を上にあげたまま数秒固まってしまった。



 ……まじか。最悪。

 もっと警戒するんだった……と頭を抱える。


「おつかれさま~~~~~っ!!!」

 これまた大声で駆け寄ってくる男は、先ほどのイケメンで間違いなかった。


「うるせえよ近所迷惑」

 私のきつい口調にピタッと止まるイケメン。さっきは一応店員と客だったから敬語も使ってたし、冷たく突き放すような言い方はしなかったけど。


 今はもうただの高校生だから。しかも同い年らしいし。


 ──これで幻滅したでしょ。てかしてほしい。


 だけど私も人間だから、罪悪感っていうものを持ち合わせているわけで。暴言を吐いた手前、なんとなく彼の顔を見れずにいた。


「まやちゃん…」

 彼の声色からは、感情を読み取れない。


「なに?言っとくけどこれが私の素だから。幻滅したならもうつきまとわないでね」


 そう言い放ち意を決してイケメンの顔を見る。


 やっぱりちょっと言い過ぎたかな……なんて反省した……のに……。


「──はあ?」

 思わずそんな声が漏れる。


 だって、あいつ。すごいキラキラした顔してるのはなんで!?



「──まやちゃんかっこいい!!!!!」

 いやちょっと意味分かんない。


「あのね、あのね!!」


 どんどん近づいてくる彼に身体をのけ反らせて後ずさりする。

「……なに」

 もうあんまり反抗する気もおきない。


「まやちゃん」

「だからなに」


 下唇を噛んで、照れたように笑ってからそっと私の頬に触れる。


「──俺、まやちゃんのことすきだよ」

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