第3話


 ……なんなの、この辱め。


 しかも同級生かよ!!同じくらいだとは思ってたけど……。


 それにしてもこいつ、クレーマーじゃないな……とうすうす感じ始め、返答も雑になってくる。


「プライベートなことはお答えできません」

「いないんだね!?」


 まてコラ。まあ確かにいないけど。

 間違いではないから、肯定も否定もせず軽くスルーした。


「──じゃあ俺と付き合ってください!!」




 イケメンクレーマー(仮)はとんだ爆弾落としてきた。


「すいません無理です(即答)」


 “じゃあ”じゃねえよ。

 言わせてもらうけど馬鹿だろ、こいつ。


 レジカウンターの周りでも野次馬が集まり始めている。この謎の告白も言わずもがな、大音量だから。


「──え!?なんで!?」

 イケメンだからって調子に乗るなよ。(二回目)


 この顔だと、女に振られたこととかないんだろうな。

 こんな大観衆の中で恥をかかせるのは申し訳ないけど、ここは心を鬼にする。


「私は初めてお会いした方とお付き合いできませんので」

「え、初めてじゃないよ!!」


 いや初めてだわ。

 前に会ってたらこんなキャラの濃い奴、嫌でも覚えてるだろ。私そんな記憶力悪くないもん。


「どこかでお会いしたんですかね?」

 未だ引き攣る頬を必死で堪える。

「うん!!秘密だけど!」

 てへっと頭に手を当てて言う彼。


 お前が言い出したんだろうが!!


 ──とは、言っていないよ。

 深呼吸をして、自らを落ち着ける。



「バイト、何時までですか!?」

 質問攻めはまだ終わらないのか……。そろそろ疲労が溜まってきた。


「いや、それこそ言う必要あります?」

「え?だって、初めて会った人とは付き合えないんでしょ?なら、まずは仲良くならないと!!」


「結構です(即答)」

「それが結構です!!」


 ──なんなの、ほんと!!

 私のイライラオーラにも動じない彼。多分、わかってないんだろう。


「──教えてくれるまで、ここを動きません!!」


 なんて腕を組んで本当に動く気がない男に私が頭を抱えていると、後ろからひょこっと出てきた店長。


「あ、まやちゃん20時までだよ」

「店長!!!!!!?」


 ちょっとハゲ!!なにナチュラルにチクッてんの!?


 店長に詰め寄ると「まあまあ」と宥めようとする。男の子は一瞬ぽかんとして「わーい!!」なんて大喜びしていた。


「だって、そこ動かないのは困るし…」

「だからって!!」

 私の言葉に被せるように

「いいじゃん。イケメンなんだし」

 と真顔で言った店長。


「いやあ、照れます」

 顔を赤らめて恥ずかしそうに鼻を擦る男。


 照れんな。


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