第31話 バンVSアント軍団

 赤羽とカティは無事すり抜けたな。


しかしなんだこのアリどもは。

全くニオイがしねえ。

ただの雑魚じゃねえ。

毒針、麻痺針を飛ばすだけじゃなく、こっちの攻撃を学習してやがる。

躱す、避ける、カウンター攻撃を入れてくる。

こっちが対応しようとすると、嫌な位置に針が飛んでくる。

当てる目的じゃない、こっちの行動を制限する目的で攻撃してくる。

統率されている動き、だが一匹一匹が考えて動いている。

アリ型だが、ただのバカじゃない。

なんなんだやりにくい。




この槍一本じゃ仕留めきれねえな。

こいつらを切ったときにでるギ酸、そして体液。


槍の切れ味をどんどん悪くしてやがる。


「そろそろやるぞ!バン!」


「おうよ!」



隊長のお声がかかった。

そろそろこっちも能力を見せるときよ。



バンの両腕が巨大化、硬い蹄になる。


部分強化 キャメルフーフ



槍は捨てる。というか握れない。



すばやく近づいて一撃。

アリの顔がへこむ。


いける。1匹につき1撃。


30匹はいるが、もつ。


俺は獣人の中でも体力があるほうだ。


草食獣人の獣化。


その中でもさらに持久力がある自身がある。


普通に戦う。

勝てなそうなら獣化。

獣化しても負けそうなら逃げる。


ソロで活動してきた時からのサイクル。

決して無理はしない。

肉食タイプほど戦闘に向いた体質じゃない。

だから逃げる。


そんな生活を送っていたらいつのまにか

獣化してもそんなに体力が減って無い事に気づいた。



2・3・4匹・・・

次々とアリに蹄をくらわせる。


獣人強化 獣化 この二つのスキルは両立する。

ズージェリアの教え。

部分強化 部分獣化

こいつは使える。

本来の野生の力が解放される。

それでいて知性は残す。

軍の戦術を学んで一皮むけた。

もともと獣化しても肉食獣人どもよりは冷静さを保てたが

こうも意識がクリアに動けるとはな。


毒針は俺にも効きにくい。




俺はフタコブラクダ。

脂肪と水分を背中に貯められる。

血中の毒素もここに集められる。

だが完全な無効化じゃない。

早めに決めなきゃな。


クロックが相手しているグリーンアントが魔法を発動。

唯一の出口が塞がれる。

くっそ。

だがこいつらどうやって抜け出すつもりだ?

こいつらダンジョンの構造を変えていた。

穴掘れるのか?アリだから。


ダメだな。時間がない。

グリーンが予想以上の攻撃をしてきた。

この空間ごとつぶすような攻撃をしてきたら詰みだ。


早めに勝負を決める。

両腕、両足先のみの完全獣化。

さらに素早く動き1匹ずつ殺す。

多少毒針を多めに喰らうが

構わず真っすぐ突っ込んでいって殺す。


そしてほとんどを倒しきったと思ったところだった。


空間を覆いつくすような数の魔法が発動する。



やっぱりか。

グリーンを2人で速攻倒す

そういう作戦にすべきだったか。



空間ごとつぶされるような数の魔法のなか

咄嗟に槍を手に取った。



崩れていく。土に埋められていく。

クロックの方をちらっと確認すると、奴の頭をかじりとり獣化していた。


やるじゃねえか隊長。援護もなしに。



そして崩れた土に完全に身体を覆われた。



希望はある。1つだけ。

鑑定してみなければ分からないけど。


国で習った。

モンスターを殺すとまれに

殺したモンスターが持っていたのと同じスキルか、似たスキルが手に入るって話。

だからアリを出来るだけ殺した。

やつらが持っているであろう穴掘り系のスキル。


イメージだがスコップ的な物を持っていた方がいいかな

と思って咄嗟に槍をつかんだ。



そうだ。いけるはずだ。

グリーンアント

こいつはもしやゴブリンを一定数殺して特殊進化した個体ではなかろうか。

地魔法ってのは魔法系特化型ゴブリンが大体持っているスキル。

こいつはこれをもったやつを殺し習得したんじゃなかろうか。


だったらアリをかなりの数殺した俺が習得できないはずはない。


そう思いたい。

一定数とかまれに習得とか賭け要素も多いがピンチに発動しないでそうする。

頼むぜ。

赤羽とカティもこのダンジョンから連れ出さんといけないしな。



いくぜ。ぶっつけ本番。

スキル「穴掘り」発動。


槍で頭上をつつく。

いける?か?

よくわからん。

腕を動かしてみる。

ああ、柔らかい。

硬いはずの土が、水か砂をかくようだ。

クロックのもとへ。

方向は埋まる前に確認した。



どこだ?

このへんに埋まってるはずだ。

ここか?

このへんか?

いた。

クロックの足首をつかむ。


つかまれたクロックは一瞬びくっとした後

すべてを理解したかの如く

デスロールを発動した。


そのままダンジョンの地下2階まで掘り進んだ。


だいぶMPをつかってしまったが

ほぼ無人、モンスターも大していない2階へと生還した。


「ぜー、はー、おう、バン。デスロール維持はきついな」

「はーはーこっちもMPぎりだぜ。」

「じゃ・・・寝るか」

「ああやばかったな。寝るか」



俺たちはアカとカティを救出すべく寝ることにした。

つーか限界。

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