第22話 赤羽 連行
朝を迎える。
二階の部屋には木製の大きめベッドがあった。
獣人は身体が大きいからな。
あとは鏡とタオルがおいてあるくらいの簡素な部屋だ。
転移初日に無一文で宿に泊まれるとはありがたい。
部屋に一礼して一階へ降りる。
「おう兄ちゃん。
昨日は面白かったぜ。な?ところで名前は?」
「ああ名前行ってなかったか。
赤羽です。
よろしく。」
「ははは、赤羽かー。
変わった名前だな。
さすがにこっちの人間じゃないな。
改めてクロックだ。よろしく。
んで、これからどうするんだ?」
そういいながら椅子を引く。
「朝飯はおごりじゃないぜ?出世払いよ」
「なにからなにまで悪いな。いただくよ。
今後は・・・そうだな。
とりあえずレベルアップを目標にしたい。
あとは情報だな。この国、世界の事、全然分からないんだ」
「ほーなるほどな。俺は教えるのは得意じゃないしな。
そういうのはピューイだな。ギルドであったろ?ペンギンの」
「ああ、あの人か。獣人魔法とかいってたな。」
「レベルアップはまかせろ。
この世界にきたらレベルアップを目指すのは当然さ。
この国には3つレベルアップに適したもんがある。
1つ、冒険者になる
2つ、コロシアムで剣闘士になる
3つ、軍に所属して戦争に行く
おすすめは冒険者だ。俺が手とり足とり教えてやるよ。
そろそろ新しい仲間を募集しようと思ってたんだ。
つーか俺と来いよ!」
「仲間も知識も手に入るなんてありがたい。是非頼むよ」
「おっ!決定だな!
じゃさっそくギルド登録しねえと。
ギルドに行こうぜ。」
朝ごはんをかき込むクロック。
「クロック、つけ払いそろそろ払ってね。」
いつのまにか後ろに立っているウサギ娘。
「おおう。すまんすまん。怒るなよユーン。
新しい仲間も増えたしダンジョンアイテムで一攫千金だ。
倍にして返してやらあ」
「もう少子良いんだから。赤羽さんもクロックに言ってやって」
てきぱきと皿を片付け、キッチンに戻るユーン。
「あ、あとお兄ちゃんみてない?全然音沙汰無いんだから」
「いやあ見てねえな。じゃ、行ってくるわ」
「はいはいありがとうございましたー朝ごはん代もつけときますー」
ふてくされながら手をひらひらとふるユーン
クロックについていく。
朝の陽ざしが坂に反射して、きらきらと輝く。
美しい街並み。
クロックと登っていく。
「そういえばおめえ足悪いのか?普通に歩いてるけど」
「ああ杖な。
ストーンって魔法つかったら取れなくなって。色々形を変えてみてはいるんだが」
「なんだそりゃ。
転移者・転生者は魔力強すぎて不具合が出ることがある
とかそんな話を聞いたことがあるけどな。
それも専門外だ。ピューイに聞いてみよう。」
ギルドにたどり着く。
昨日のバカ騒ぎとは打って変わって、中の獣人たちは真剣なまなざしで看板を見ている。
「お、ズージー。来たなゲロ吐き爬虫類。鑑定男」
ラクダ男バンが近づいてくる。
「ズージー。やかましいぞ低レベル。妹がさがしてたぞ。」
「ああ俺は家族にもとらわれない男なのさ。
宿を継ぐ気なんてないんだ。」
(ユーンの兄貴ってこいつかよ。ウサギ娘の兄はウサギ男じゃないのか)
「ズージー。鑑定男。昨日は楽しかったぜ。
で、冒険者ギルドに登録に来たってわけか」
「ああそうなんだ」
「おう、こいつは俺たちのパーティーに入るぞ」
「マジか。今更だが俺はバン。砂漠を駆ける一陣の風。パーティーの生命線さ。よろしくな。」
「レベル低いけどな。ははは」
「(こいつもパーティーなのか)ああ、よろしくな。」
「でお前さん、役職は?」
「あー決まってない」
「魔法使えるなら魔術師か。あとは人間なら剣士が多いな。
鑑定もあるか。」
「とりあえずピューイ待ちだな。わがパーティーの紅一点もまだ来てない。」
クロックが腕を組む。
「自称エリート剣士もな。」
「あいつは病気がちだからなあ」
なにやらあと2人いるらしい。
「とりあえずギルド登録だな。」
「おう、忘れてた。ペリカン嬢のとこ行って来いよ赤羽」
クロックが背中を押す。
「すいません、ギルド登録したいんですけど初めてで。」
「あ、昨日の鑑定士さん。ズージー。
お待ちしてましたよ。
私は受付嬢のペリーピーチです。今後よろしくお願いします。
書類の用意できてます。
転移者さんということで国に報告、一応冒険者ってことで話は通してあります。」
仕事が早い。
「で、こちらがギルド登録証ですね。
他の国でも使える本人確認用書類の代わりにもなりますので
なくさないように注意してください。」
首から下げるプレート状の登録証をもらった。
「クロックさんとパーティー組むんですね。
古株ですけど荒っぽい人なので宜しくお願いしますね。
あ、お仲間がまた来たみたいですよ」
振り向くと亀獣人の女の子がいた。
茶色チェックのスカートに大きな杖。
「ズージー、初めまして魔術師のカティです。」
「初めまして赤羽です。よろしく」
「赤羽よ、あいさつは『ズージー』だぜ」
「そういうのは先に教えといてやれよクロック。なあアカ」
バンのなかで俺のあだ名はアカに決まったみたいだ。
「じゃあ私はアカさんって呼びます。」
「ああ、よろしくカティ。」
「さて剣士様はまだだがまあ来ないだろ。揃ったところで行きますかダンジョン」
「クロック、赤羽ほぼ裸装備じゃん」
「あー、剣くらい買わないといかんか。役職もまだだしな。」
「ペンギンマンを待ってたんじゃないのかよ」
「おお!忘れてた。あいつもまだ来てないようだな」
ギルドの扉が乱暴に空く。
「転移者の人間はいるか!?」
高そうな鎧をつけたチーター顔の髪の長い剣士風の女が言い放つ。
複数の兵士を連れている。
俺とクロック、顔を見合わせる。
「おう何の用だ。うちのパーティーに入ったんだ」
「クロックか。
そいつに王から召喚命令がでている。
おとなしく城まで来てもらおう。
強制だ。逆らうな。」
「王の要件はなんなんだ?」
バンが冷静に言う。
「貴様には関係ないぞ。
ところで一番レベルが低かったらしいな。
貴様、自慢の足でにげてばかりいるからじゃないか。」
兵士一団が失笑する。
「ファースてめえ」
クロックが睨む。
「貴様も連行されたいか。例の件、忘れたわけではないぞ」
「くそ、王には借りがある。あの人にゃ逆らうつもりはねえよ。」
「そうか。ではその転移者こちらで預からせてもらう。」
「赤羽、すまん。王のやつも悪い奴じゃねえから。
おとなしく連行されてくれ。
あとから必ず迎えに行く。」
そして俺は城に連行された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます