第21話 赤羽 ズージェリア
モールでの死闘、そののちに俺はズージェリアにやってきた。
ススキ野原の広がる丘をくだる。
血まみれの石が手についたままだ。
地魔法LV3ストーンロッド
手からは離れないが案の定、杖のような形になった。
ふらふらの身体にはちょうどいいサイズの杖。
ススキ野原の茎や低いところで生えている草で血を拭う。
転移するとき
帰宅魔法 集団下校をつかった。
集団ということはりん、しゅう、まもる、たかしもこっちに来ているかもしれない。
モールで分断された黒田さんたちも無事であってほしい。
街に続くであろう道をゆく。
空中に浮かぶ長い魚。リュウグウノツカイみたいだな。
大きな熊のようなガタイの猫が人をそりに乗せて移動している。
「ぼーっと立っていると危ないよ!」
ソリが追い越していく。
人ではなかった。
獣人。
定番の種族。
猫のような獣人がムチを持っていて、
狐の貴婦人のような獣人を乗せ送っているように見えた。
街はこっちで合ってそうだ。
街が見えてきた。
煙突から煙を立てている。
いつの間にか周りは畑。
なにか農作物を作っているようだ。
みたことの無い桃色の長い果実がなっている。
鶏頭の農夫が緑色のジャガイモのようなものを収穫している。
そんな光景をみながら街にたどり着く。
橙色のランプが並んでいる。
屋台みたいだ。
夕暮れのオレンジと混ざって幻想的だ。
いいニオイもする。
あいかわらず言葉は分かる。
「にいちゃん安くしとくよ」
「3割引き!今夜のおかずにいかが」
そんなことを言っている。
金がない。
屋台街を抜けると家のようなものが並んでいる。
山一帯が街。
レンガ作り、木造、長細い木で作った繭のような家、いろいろだ。
高低差がずいぶんある。
宿はどっちだ。いや金がないんだった。
こういう街は冒険者ギルドがあると相場が決まっている。
さらに街の中心へ登っていく。
一番賑わっている、人の多い、おいしそうなニオイをだしている
そんな教会のようなつくりの施設に入ってみる。
当たりだ。
剣や盾、鎧をテーブルの下におきバカ騒ぎしているたくさんの獣人がいた。
空いているカウンター席へ座る。
どうしたものか。
ほとんど居酒屋だ。
するとほろ酔いのワニ顔の男が声をかけてきた。
「見ない顔だな。兄ちゃん。
転移者だろ?腕輪付けてるの見りゃわかるのさ。翻訳能力があるらしいな。
まあまあの高価なもんらしい。
腕ごと切り落とさないと取れないけどな。わはは」
ワニ顔でそんなことを言われたらなかなか怖い。
「なんか他にもできるやつがあるらしい。
その腕輪で。
なんかできないのか?」
「ああ自己鑑定と他人鑑定ができるみたいだ」
「おおい、マジか。そりゃすげぇな。
みんな来てくれー。こいつ鑑定できるらしいぞー。」
ぞろぞろと集まる獣人冒険者たち。
「こんなぼろぼろのやつが?」
シロクマ風の男
「面白い鑑定してみようぜ」
立派なツノの鹿男
「待て待て。なんか賭けよう。レベルが1番低かったやつが全員に一杯おごるってなぁどうだ?」
ネズミ男が悪そうな顔をする
「乗ったぜ!漢クロック参戦だ!他に参加するやつぁ集まれ!」
ワニ顔はクロックというらしい。
「兄ちゃん鑑定代だ。なんか飲め!食え!ここの卵料理はおすすめだぜ。」
「爬虫類野郎、1番うめぇのはここの畑でとれた新鮮野菜だろぉ」
牛男が反論する。
「はっ。オメェの母ちゃんの畑の宣伝かぁ!」
わはははは
一同酔っ払ってるがなかなかいいやつらだ。顔は怖いけど。
「レベルなら自信あるぜ。なんてったってスピードナンバーワンだからな!」
ラクダ男
「草食野郎、スピードは俺だ」
チーター男
「このわたし、獣人魔法最強の使い手を忘れてもらっちゃこまるなぁ」
ペンギン男
わらわらと集まってくるがみんな鑑定代だとツマミをくれたり飲まされたりした。
まさか来て早々、こんなご馳走にあずかれるとは。
結局、1番レベルの低かったのはラクダ男だった。
「まさか兄ちゃん嘘だよなっ。なっ。すっからかんになっちまうよ」
「いや、レベル15だ。すまん。」
「自慢のスピードで逃げてばっかいるんだこいつは。わはは」
クロックが茶化す。
「俺のスキルも見てくれよ!」
「いや俺を先に」
「パーティーバランスを考えるわたしが先だな」
その後も散々鑑定し、その度にメシが増え飲まされた。
ペリカンの受付嬢
「今日はおしまい。気をつけて帰ってね」
ちょっと凄まれ追い出された。
おぇぇぇ
クロックが吐いている。
最低レベルのラクダ男バンはそれをみて笑っている。
「兄ちゃん、今日はおれの行きつけの宿に泊まってきな。つーかおれをやどまでつれてけー」
抱きついてくるクロック
バンはまだ笑ってる。
「そこを右に曲がればすぐ宿だ。
俺はこっちなんでな。
じゃクロックをよろしく頼むぜ」
バンは夜の闇に駆け足で消えていった。
本当に速い。
酔っ払いのスピードとは思えない。
宿にクロックを連れて行く。
肩にもたれるクロックは本当に重い。
うさぎ娘
「ふぁぁ、ズージー、いらっしゃい。ってクロックさん!?」
「おれのおごりでいいからにいちゃんをとめてやってくれー」
「ちょっとフロントで寝ないで!あと絶対吐かないでよ!
あ、お客さんは2階使って?私はこれを1階の部屋にぶちこむから」
うさぎ娘は片手でクロックを引きずり1階の部屋に投げ込む。
部屋の奥で木のベッドの軋む音が聞こえる。
なんて力だ。獣人。
「すいません、夜分遅くに。一泊させてもらいます。」
「こんな丁寧なお客さんこの国にはいないよ。ははは」
気品のある笑い方に誰かに似ている様な、懐かしいようなそんな雰囲気を感じた。
が、疲れと酔いで限界なので今日はとりあえず寝ることにする。
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