第7話 モール戦3

 目と鼻の先2mくらいまえにゲートが現れる。

「大きい!中門!?」

「初めて見たwとりま距離を取ろうw近すぎw」

しょうとまもるが目を合わせ立ち上がる。


りんちゃんが3階エスカレーター前近くの壁沿いを指す。

全員速やかに移動する。

2階にも4階にもすぐ逃げられる位置だ。




「中門は小門より完成に時間がかかるらしいわ」

「りんお姉ちゃん中門みたことあるの?」

「中門は・・・ないわ。人に聞いたのよ」

「そうなんだ」

「無理そうだったらすぐ撤退しようw」

「戦いごっこじゃないのよ!?りんちゃんも赤羽君もいること忘れないで!」


おうナチュラルに戦力外通告。


「ゲート出来る時に反応がなかった。いつものゲートとは違うかもしれない」



やがてゲートが完成した。


息をのみゲートを見つめる。


するとゲートから順番に噴き出すように紙がでてくる。いやカードだ。


4枚のカードが床に刺さり光る。一瞬のうちに4人の人が現れる。カードから出てきたように見えた。


4人は全身黒いスーツを着込み頭にはフルフェイスの様な物をつけている。


そのうちの一人が言う。


「見られているな」


こちらに顔が向く。フルフェイス越しだが確実にこちらをにらんでいるのが分かる。


手に汗をかく。



「雑魚よ。ほっときなさい。」

「任務優先。転移者とやりあうのはリスクが大きい。どんな能力をもっているか分からんぞ。」

「・・・・」

「ああ分かっている」


4人は俺たちに背を向け、手すりを超え、1階へと飛び降りた。





「クロちゃんの方だ!」

「あっちは手が足りない。俺としょうで助けに行かなきゃ」


4人の動向を察するしょう。

いつになく真面目な口ぶりでいうまもる。

そして二人はいまは動いていないエスカレーターへ向かう。


「待って!」

「3人はモールから逃げて。後で落ち合おう」


覚悟をきめたような顔ぶりのまもるに言葉を詰まらせる。

2人は駆け下りていった。


2人を止められなかった。

戦力にならない俺には選択肢などなかった。



雪谷さんが口を開く

「南側の裏口駐車場のほうから逃げよう。万が一の時の待ち合わせ場所もみんなで決めてある。」


りんちゃんはうなずくと

1階2階の裏口駐車場へのルートをパンフレットの地図上でなぞる。


「黒い4人にはマーキングした。しょうとまもるにも。あいつらは大丈夫」


そういうと立ち上がり俺と雪谷さんを誘導する。



ルートを指差すその指が微かに震えているのに気が付いたが、俺は見ないふりをした。





あっけなく駐車場へとたどりつく。

来たときとは違う自衛隊の車が何台か並んでいた。


「鍵かけてないのよ。私たちしかいないからね」

運転席に乗り込む雪谷さん。助手席に座るりんちゃん。


またこの荷台の硬い椅子に座ることになるとは。

実に1時間ぶりである。


「車を出して!西口に急いで!」


りんちゃんが叫ぶ。雪谷さんは無言でうなずき発進する。



西口に向かう。雑に曲がるので荷台を転げまわる俺。

なぜならシートベルトをしてないからだ。

俺の右手には地魔法LV1ストーンが張り付いたままなのでシートベルトができなかったのだ。



西口にたどりつく。

「出口に向かって走って!!」

りんがそう言うのと同時にモール入り口の張りガラスと扉が割れる。




「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」



まもるが走ってくる!いや滑ってくる!?


ローラーブレードのような靴をはき両足から炎をだしながら。


片手に紐?いやロープを持っている。

なにかを引いている。

裏返った大きな亀の甲羅の様に見える。


甲羅の上にはしょうとたかしが乗っている。



そして後方からは黒スーツのうちの1人。

一番背が高くガタイの良い無言だったやつがおいかけてきている。

鬼の形相で。

しかも黒田さんが戦っていたオーガの亡骸、その上半身を振り回して。



出口に向かって一直線に走る車。

追いかけてくるまもるたちと黒スーツ。




荷台から限界まで左手を伸ばす。右手のストーンをつっかえ棒のようにつかいながら。



「つかまれ!!!まもる!!」


「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」




まもると俺の手が触れた瞬間だった。

車の荷台になにか飛んできた。

衝撃で車体が浮く。

空中で振り返る。オーガの亡骸だ。

黒スーツに目線を戻す。

右手でオーガを投げたであろう体勢から、左手をこちらにむけ魔法陣を形成する。

実に流麗な動きだった。

魔法陣がほどけるように消えると、らせん状に渦巻くような突風が向かってきていた。

周囲の砂や石、砂利、あらゆるものを巻き込んで。

それは俺たちをはるか前方へと吹き飛ばした。




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