第3話 逃走
車から這い出すとオークたちと母と自衛隊が向かい合っていた。
オークの炎の手刀により分断され、横転した車は燃え上がった。
オークと目があった。
まずい
と思ったがオークは母たちのほうに顔をむけた。
隊長と思しき母の側の自衛隊が叫ぶ。
「撃て!優先事項を忘れるな!」
3人の一斉掃射だ。炎の壁の向こうからも乾いた音がする。
炎の熱気と立ち上がる砂埃で俺の視点からは
撃たれたオークらがどうなったのか見えない。
炎で分断されたこちら側の二人はまだ走れそうな前方車両に少しずつ近づくように
オークを中心に弧を描くように動きながら発砲する。
俺もその後ろについていく。
自衛隊の一人が俺を車の荷台に乗せると自分も
すばやく運転席に乗り込み発進させる。
「先輩!」
徐行しながら顔をだす。
先輩らしい自衛隊は、オークらに体を向け発砲したままで走る車を追いかける。
そして荷台に飛び、乗り込む。
オークが手下のゴブリンに俺たちを狙うように手の動作のみの指示をだす。
小さな白い角の生えた狼にのったゴブリン2体が追いかけてくる。
よだれをたらし激しい息をつくゴブリンが迫ってくる。
走る車の荷台から再び銃撃する。
ゴブリンに当たってはいるが痛がる素振りも見せずむしろスピードをあげてくる。
1体はそのまま追いかけてくる。
もう1体はさらに加速し車の横を並走する。
並走した1対が小汚い腰巻を振り回し運転席めがけてなにかを投げる。
運転席には当たらず車の側方にぶつけられる。
石かなにかをなげつけられた音がする。
「石投げてくるとか舐めてんのかぁ!!」
運転席の自衛隊がハンドガンで応戦する。
並走していたゴブリンは減速しやがて見えなくなった。
一方で後ろのゴブリンは銃撃をものともせずついてくる。
「くそ!当たったそばから回復される!」
玉切れで弾倉を入れ替える。
ゴブリンがこちらに向けて左手を挙げる。
ボウガンの矢が自衛隊を直撃した。
倒れる自衛隊。
小銃が俺の足元に転がってくる。
俺はとっさにそれを拾うとゴブリンにむけて発砲した。
十発くらいは外したが3,4発はゴブリンの腹部か胸部あたりに命中した。
ギギィ
と小さく高い声をあげたゴブリンはそのスピードのまま地面に転がった。
しばらくするとゴブリンがおそらく絶命したのだという事が分かった。
俺の頭に
レベルアップを告げる音声が流れたからだ。
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