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 それにしても妖精だとか人魚だとか、ファンタジーの世界みたいで素敵。ここは素敵な場所だから、そういう不思議が実在していてもおかしくないような気がする。


 そうだ、魔法少女だっているんだよ。今、ここに。だから、妖精や人魚もひょっとしたらいるかもしれない。




――――




 翌朝は快晴だった。私は目が覚めた瞬間からうきうきしていた。


 ベッドから跳び起きて、隣の瑞希に声をかける。


「朝だよー!」


 そしてカーテンを開ける。朝日が眩しい! いいお天気! 絶好の海水浴日和じゃない!?


「うう、眩しい……」


 そう言って瑞希がタオルケットにもぐろうとする。それを私は阻止した。


「朝だよ! 起きて!」

「……なんで朝っぱらからそんなに元気なのよ……」


 瑞希がしぶしぶ起き上がった。


 一階に下りてみんなと朝ごはんを用意した。トーストを焼いて、卵料理を作る。私は目玉焼き。瑞希もそれで、沢渡さんはゆで卵。楓ちゃんはオムレツを作ろうとして、悪戦苦闘の末スクランブルエッグになってた。


 ウィンナーもそえて。あとは、レタスをちぎってきゅうりを切ってトマトを飾って、サラダも作る。それから沢渡さんがオレンジを切ってくれた。朝から豪華な食卓だ!


 食事が済んだらさっそく海に行きたかったんだけど、沢渡さんが「まずは宿題をやってから」と止めた。うう……そうだね。そのために宿題を持ってきたんだった……。不満そうな私に沢渡さんが言った。


「海で遊ぶのって結構疲れるからそんなに長くいれるもんじゃないよ。宿題をやる時間を差っ引いても、十分楽しめる」


 一時間ほどお勉強の時間になってしまったけど、それはそんなに悪くなかった。よくわからなかったところを、沢渡さんや瑞希が教えてくれる。それに、朝の早いうちにやるべきことを済ましておけば、その後たっぷり楽しめる!


 お勉強が終わったら、さあ、出発だ。お姉さんが車で海水浴場まで連れていってくれることになっている。




――――




 途中でお昼のお弁当を買って、海に到着! そこは別荘から車で15分ほどの場所だった。小さな海水浴場で、そんなに混んでいない。それがありがたい。


 木陰にレジャーシートを敷いて、順に更衣室で着替えてくる。私と沢渡さんが先に着替えて、シートで待っていた他の二人とバトンタッチ。私は新しいピンクの水着が嬉しくて、自慢したくて仕方ない。


 なので二人が更衣室に行く前に散々自慢する。


 瑞希は、一緒に買いに行ったときにすでにこの水着を見ているからなのか、それとも性格なのか、たぶん後者なんだろうけど、私の自慢にはいはいと素っ気ない。一方、楓ちゃんはかわいいねってすごく褒めてくれる。楓ちゃんは素直でいい子だよ~。


 沢渡さんは濃紺の、競泳水着のようなすっきりとしたシンプルな水着だ。とてもよく合ってる。


 二人が着替えてやってきた。楓ちゃんは鮮やかなオレンジの水着。熱帯の派手な花はフルーツが描かれていて、かなり賑やかな感じなんだけど、はっきりとした目鼻立ちの楓ちゃんには似合う。というか……。


 学校のプールの時間とかさ、昨日の温泉でも思ったんだけど、楓ちゃん、スタイルいいな!?


 この……出るべきところが出て、引っ込むべきところが引っ込んでいるというか。それに比べると私の身体はとても凹凸がない。ストンとしている。こう……メリハリがなにもない。


 でもそれは成長途中だからね!? きっと、もう何年かしたら楓ちゃんのようになる……はず、だと思う……思いたいけれど……。もやもやしてると、楓ちゃんの後ろから瑞希がやってきた。


 無地の水色の水着で胸の周りにぐるりと白いリボンがある。かわいらしい水着。そしてそれを着ている本人も……うん、かわいらしい。顔もだけど、体形も私と同じく凹凸がなくてかわいいな!


「瑞希~!」


 私はこちらに近寄ってきた瑞希を捕まえて、よしよしと頭をなでた。


「私たち、仲間だね!」

「突然何よ」


 詳しいことは言わないことにする。


 ともあれ、海だ! 荷物の見張り番を一人残して、交代で泳いでくることにする。じゃんけんで順番を決める。最初の居残りは楓ちゃん。私と瑞希はたちまち海へと駆けだした。沢渡さんもついてくる。




――――




 砂浜がとても暑い! 瑞希ときゃあきゃあ言いながら、浜辺を走って、海に足をつけた。冷たい。足の裏で波にひかれて砂が動いて、くすぐったくて気持ちいい。海水は思ったよりひんやりしていて、ちょっと躊躇するけど、身体や顔にぺちゃぺちゃ水をかけて、そして思い切って海に入っていく。


 気持ちいい~。波が心地いいよ~。


 空は青い。上を見ると太陽が眩しい。はしゃぐ人々の声が聞こえる。海水浴場はちょうどいいくらいの人数で賑わっている。家族連れ、カップル、私たちみたいな友だちグループ。みな思い思いに楽しんでいる。


 肩まで入って、少し泳いでみることにした。といっても泳ぎは上手くないんだけど。クロールはへたっぴだから平泳ぎ。といっても平泳ぎも上手くないけど。でもクロールと違って顔をつけなくてもすむじゃない? 私、クロールの息継ぎが苦手で、どうしても水を飲んでしまうのだ。


 瑞希は私よりちょっぴり泳ぎが上手い。でも同じくらいかな。一番上手いのは沢渡さん、水を切って軽やかに泳いでいる。


 でもプールの授業はそこまで好きじゃないと言っていた。理由は眼鏡をを外すからで、眼鏡を外すと、戦闘力が落ちてしまうらしい。つまり、近眼なので眼鏡なしでは周りが見えづらく行動が制限されるってことらしいけど、私は目が良いのでいまいちよくわからない。

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