3.災難の前兆
「キミたち、また派手にやってくれたね……」
紳士然とした白髪老人。彼の覇気が社長室に充満していた。標的はもちろんエグゼキューターとメタルヨロイである!
彼らは小山田たちの身柄を回収業者に預けた後、社長直々に呼び出しを喰らったのだった。
社長の経歴は凄まじい!
そんな恐ろしい男の額に、バキバキと青筋が浮かび上がる!
「つい先週もスカイツリー壊して都知事に怒られたばっかりでしょ? どうして同じ過ちを繰り返すの……?」
『スミマセン……』
メタルヨロイは平身低頭。だがエグゼキューターはどこ吹く風!
「どうせ廃ビルなんか残しといても、別のテロリストが住み着くだけだよ。いっそ壊しちゃった方がマシだって!」
「そういう話じゃない! 派手にやるのは構わんが、被害額は抑えろと言っているんだ! 見給え、この見積書をッ!」
社長はケタ違いの書類を二人に突き付けた。件名は、道路災害復旧工事費!
「君たちがブッ壊したビルの破片が道路に落ちて、大変な損害になってるんだよ! 道路ってめっちゃ高いんだからね!? 平方メートルあたり何百万の世界だよ!? おかげでウチは、保険会社にも愛想尽かされる寸前だ!」
社長の怒声もエグゼキューターには響かない! 反省の色が見えるどころか、口笛を吹きながらメタルヨロイを磨き出す始末である!
それに比べ、メタルヨロイは疲弊していた。巨体に見合わず小心者の彼にとって、説教は凄まじいストレスになる。
(というか被害額さえ押さえれば派手にやってもいいのか……?)
社員が無茶苦茶なら社長も無茶苦茶だ、と彼は内心呟いた。
「聞いているのか、
『は、はいっ!?』
「とにかく! エグゼキューターくんはこの調子だから、君がしっかりしてくれないと困る! テロリストなんか最悪殺しちゃっても、ボクがなんとか揉み消すからさァ! 道路とかビルは気を付けてよねマジで!」
(なんで俺はこんなヤバイ会社に勤めてるんだ……?)
その時、固定電話が鳴った。社長は顔を顰めながらも「失礼」と呟いて受話器を取る。
「私だ。おお、久しいな。……なに、本当か? 分かった。すぐ手配しよう」
受話器を置いた社長は、あまりにも不気味な微笑を二人へ向けた。
「たった今、とても素晴らしい仕事が入ったよ」
メタルヨロイの背筋が凍り付く。彼は知っているのだ。社長が笑う時。それは往々にして災難の前兆であることを。
「喜び給え。次の仕事は、何をどれだけ壊しても
『……それ、本当に大丈夫な仕事なんですか?』
恐る恐る
「大丈夫大丈夫。今、総理大臣がそう言ってたんだから」
『は?』
「忙しくなるよ。いやはや参ったね本当に……」
そう言って白髪色のヒゲを撫でる彼の表情は、いつになくにこやかなものだった。
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