2.Alternative world
西暦4,649年。社会問題が多様化する一方で公務員は次々に削減され、あらゆる行政機構が崩壊した。それ以来、社会の仕組みが狂ってしまって、どんな仕事も下請けの延長線になってしまった。
あらゆる公務が委託業者に任された。戸籍の管理、学校教育、税徴収、インフラ管理運営――例を挙げればキリが無いほどに。
だが委託者も人員不足に悩まされており、下請けに再委託する。しかし下請け業者も人材が不足しており、再々下請けに出す。そして下請先もまた――。
そんな循環を繰り返す馬鹿げたラビリンス構造に、あらゆる会社が巻き込まれている。そうやってこの街は日々、辛うじて廻っている。
誰が風刺を利かせただろう、最前線で働く人間の通称だ。
(株)
メタルヨロイやエグゼキューターの所属する強襲課の主な業務は、「特殊技能を要する治安維持」――早い話がテロリストの撲滅。
実際、国に不満を訴えるためにテロリストを志願する人々は年々増加している。仕事はとても忙しい。
最近はテロリストの間でも業務委託の
一社あれば、その下に数百社。ゴキブリのような連中だ。無限の下請地獄はテロリスト界隈でも広がっている。
この街では、誰もが誰かの代わりを務めているのだと彼――メタルヨロイは思う。
(メタルヨロイなんていう大層な
終わりが見えないテロリストとの戦いに、彼の精神はすり減っていた。同僚のエグゼキューター(これも
そもそも自分は、コンテナを右から左に運ぶような仕事がしたいのだ。どうせ誰かの代わりなら、そっちの方が百倍マシだ。
(結局俺も、誰かの代わりにテロリスト退治をやってるだけなんだろうなぁ……)
自分がやらなくたって、誰かが代わりにやる。そのために業務委託契約というものが存在しているのだし、そうやって廻ることがこの街の意志なのだ。
なら――なら、自分がここで戦い続ける意味は一体なんだ?
メタルヨロイは、ずっとその答えを見出せずにいる。
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