第4話 地上人(もののふ)
「(ああっ、目が、目がぁ!)」
天人が現れると同時に輝く月の光は強さを増し、目もくらむほどになった時、屋敷の周囲に居並ぶ2000人のもののふどもは一様に力をなくした。
昼の光にも匹敵する、いや、満月の光の10集めたほどに匹敵するこの不思議な光は、残酷なことに地上人の身体機能を奪う事はあっても意識を奪う事はなかった。
手足に力が入らぬ。
立っていられないのだ。
頭が割れるように痛い。
自分以外も一様に、地に臥せっている。
先ほど現れた天人どもは、屹立し、我らを見下ろしている。
200人はいるだろうか。
光の向こうにおぼろげに見える奴らは、男も女もいる。
奴らは、神なのか?
我らは神に逆らおうとしたのか。
帝の勅命で、召集されたとき、いったい何と戦うのか、わからなかった。
敵は月より舞い降りる天人であると聞いたとき、慨歎の声よりも、懐疑の嘆息の方が多かった。
自分もそうであった。
月より人がやってくるわけがない。いるのはウサギだけだ。
帝のお戯れに付き合わされるこっちの身にもなってくれと、やってくるはずがない月よりの使者に備えて、完全武装で集った2000人。小さな山里は、そこかしこともののふで埋め尽くされておった。
そして、来た。
体が、動かぬ。
目もくらんで、見えぬ。
おそろしい。
あな、おそろしや。
仲間も同様、立ち上がることすらできぬ。
しばらく経つと、光が消えた。
体のしびれもそれと同時にやわらぎ、消えた。
汗と涙と鼻水で濡れた顔を上げた。
後で聞いた話によるとかぐや姫は無理やり連れ去られたらしい。
地上のもののふどものふがいなさをお上は不問にしてくださった。
しかし、あれはどうにもならないことだった。
あれは神だったのかもしれない。
地上に生きる普通の人間である我々には抗うすべはやはり、ないのだ。
帝のお嘆きはいかばかりであったろうか。
今日は、ただ、無力感のみが、自分のこの身を苛むのであった。
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