第2話あの日

誠也は向日葵畑に着いた

大きく両手を上げて、深呼吸して

『綺麗でしょう・・いい香り』

微かに花の香り、土の香りがしていた。

『ここに来ると、俺、落ち着くんだ』

それを見た水樹も、黒い鞄を放り投げる様にして、大きな声で夏の空に向かって

『私、向日葵大好き…』

水樹は向日葵、向日葵と言うよりも向日葵畑には、大切な思い出があった。

『どうして、落ち着くの』

水樹は、誠也を見て聞いた。

『自分でもわからないけど、こうやって見るのが好きなんだ』

誠也は膝を曲げて、向日葵より小さくなり向日葵を眺めている。

『変なの』

変わった男の子と思ったが水樹は、鞄からスマホを出して

『せっかくだから、写メ撮ろう』

この位置がいいかな、独り言を言いながら向日葵畑の中を歩いて

『夏休みが終わった、向日葵は無くなるねぇ』

〈カシャッ〉

スマホからシャッター音が

水樹は向日葵畑の中を歩き回りながら何度も写メを撮った。

『わぁー大変…ない、ストラップ…誠也君も探して』

慌てて、中腰になり探し始めた水樹だった。

『私の宝物なの』

少し顔を赤らめて、必死に探す水樹、それを見た誠也も探し始めた。

どんなのストラップとも聞かずに探す誠也は、向日葵のストラップを見つけて

あれっ、誠也は向日葵のストラップを拾って、それを右手に持ちながら探していたいて

『誠也君、教室かも…』

水樹は誠也を見て言った

『そ…それ、誠也君だったら』

校舎に戻ろうとする誠也の右腕を軽く叩いて

『早く言ってよ、ありがとう』

水樹は誠也の右手に持った、向日葵のストラップに手を掛けた

『これ、俺のだよ』

誠也は少し驚いた顔をした

『だって…』

水樹は誠也を見て不思議そうな顔をして

『それ、私のだよ』

誠也君、誠也、せーちゃんなの頭の中であの日がよみがえった水樹。

あの、5年前の夏休み

『そんな所で、何しているの?』

確か、向日葵畑の横にあった土手に

一人の男の子が向日葵を見る事なくゲームをしていた。

水樹が12才の時の、家族旅行で行った、海の見える公園、7月25日

あっ今日も…

あの夏の日、水樹は一人の男の子に声を掛けた。

その子は迷惑そうな顔をしてゲームをやめて、水樹を無視をして、向日葵畑の中を歩き始めた。

『そんなに急がないで、転んじゃうよ…』

水樹は男の子を追って小走りに歩いた。

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