スライム退治の最中、レアなスライムと遭遇する
スライム退治に俺とエアリスは向かった。
スライム達は喉かな湖の近くに生息しているらしい。
その日は快晴だったということもあり、クエストの攻略中というよりは行楽に来ているような、そんな気分でもあった。
「なんだか、ピクニックみたいな気分ですね、ルイド様」
「ああ、その通りではあるが。些か緊張感に欠けるな」
Eランククエストのスライム退治とはいえ、初クエストではあるのだ。こんな緊張感のないピクニック気分で臨んでいいものなのか。
甚だ疑問ではあった。
「まあ、スライム退治なんですから、気楽にやりましょうよ」
「それはそうだが。受付嬢さんが説明をしていたレアなスライムの存在がある」
「メタルキングスライムですか!?」
「ああ……なんでもそいつの皮膚は超希少金属であるヒヒイロカネすら凌ぐらしい。まともに手に入る硬い金属といえばアダマンタイトがあるが、それよりも硬質な金属なんだぞ」
「けど、大丈夫ですよ」
「なんでそう思う?」
「それはもう。ルイド様がいらっしゃいますから」
「はぁ……」
俺はため息を吐く。気楽に言わないで欲しい。戦闘というのはいつ何時、何があるかわかったものではない。油断していると足元を掬われる事だって多々あるはずだ。強さとは絶対的なものではない。流動的であるし、相対的なものであるはずだ。
「エアリス……油断をするな。足元を掬われるぞ」
「はーい」
エアリスは答えた。
「もうすぐ、スライムの出現地帯に着く。気を付けろ」
「はい……」
「そういえば、前に渡した剣の付与魔術【エンチャント】を消していなかったな」
「なんで消すんですか?」
「ドラゴン相手に俺が使った付与魔術【エンチャント】では今のエアリスには合っていないだろう」
「それもそうですね」
あの時付与した効果はあくまでも対ドラゴン用に俺が付与したものだ。だから合っているはずがない。
「はい」
俺はエアリスから剣を受け取る。手に取ってみて感じる、やはり良い剣だ。無属性ではあるが名剣だろう。剣聖である彼女が愛用するだけの事がある。由緒ある名剣なのだろう。詳しくは知らないが。
「付与魔術解除【エンチャント・ゼロ】」
俺は付与効果をかき消した。これで付与効果はなくなったのだ。
「ありがとうございます」
「また必要になったら付与魔術【エンチャント】を施すから」
「本当ですか!? 嬉しいですっ!」
「本当だったら一回につき、金貨一枚でも取りたいものだ」
「えー! そんな事したらすぐにお財布が空になっちゃいますよ」
「嘘だ。冗談だよ。俺達はパーティーだからそんな事はしない」
「そうでしたか。本当だったら出世払いでお願いしたいものでした」
出世払いか。一体、いつ、何を以って出世したと判断するのであろうか。
「それよりも、標的(ターゲット)のモンスターが現れたようだ」
「すらっ!」「すらっ!」「すらっ!」
幾多ものスライムが姿を現す。アメーバのような気持ちの悪いスライムではなく。デフォルメ調の可愛らしいスライムだ。色とりどりのスライムが複数体姿を現す。
「普通のスライムだな。これだったら別に付与魔術【エンチャント】を施さずともエアリスの剣技だけで倒せるだろう」
「は、はいっ! やってみます! はあああああああああああああああああああ!」
ザシュッ!
「すらっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
エアリスの剣技でスライムは断末魔を上げ、果てた。
「ナイスだ。エアリス。その調子でジャンジャン倒してくれ」
「はいっ!」
エアリスは巧みな剣技でスライムたちを屠っていった。この程度の相手であればわざわざ付与魔術【エンチャント】を武器に施すまでないだろう。
俺はそう思っていた。
「終わりました」
「やったな、エアリス」
これでクエストクリアだ。俺達は一仕事が終わり喜んだ。
「帰ろうか。冒険者ギルドに」
「はい! そうですね」
クエストをクリアした俺達は冒険者ギルドに帰り、報告をする事にした。
――しかし、その時であった。
ドスン! ドスン! ドスン!
大きな音がした。ピョンピョンと何かが跳ねてくる。その度に、地面に衝撃音が響き渡るのだ。
「あ、あれは……」
「ま、まさかあれでしょうか。受付嬢さんが噂していたレアなスライムって」
「ああ……どうやらそのようだな」
「メタルキングすらっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
俺達の前にメタルキングスライムが現れた。メタリックなカラーをした大型のスライムだ。恐らく、倒したスライムたちはこいつの子分みたいなものだったのだろう。
子分を殺されたという事で大変ご立腹のようだ。
「気を付けろ! エアリス! こいつはさっきのスライムとは違う!」
「は、はい!」
こうして俺達とメタルキングスライムとの戦闘が始まった。
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