第6話 密室③
密室。壱の箱の中に手を入れている吉良。
吉良「……あった。二重底になっていたみたい」
弐の鍵と押しボタン、そして折りたたまれた紙を取り出す吉良。
吉良「また紙……」
紙を広げる吉良。紙には詩のようなものが書かれている。
『誰が見つけた 死んだのを見つけた
それは私よ 蠅がそう言った
私の眼で 小さな眼で
私が見つけた その死骸見つけた』
吉良「どういう意味なんだろう……?」
矢内「それ、マザーグースだね」
根間「なにそれ?」
矢内「知らない?」
麻生「たしか、イギリスとか英語圏の童謡でしたっけ?」
矢内「うん。「ロンドン橋落ちた」とか「メリーさんの羊」とかは知ってるでしょ?」
根間「あー、まあそれなら」
矢内「そういう作者不詳の童謡をまとめてマザーグースっていうんだけど、これはその中の『クックロビン』ってやつの一部だよ」
平 「だーれが殺したクックロビン!ってなんか聞いたことあるな」
矢内「それパタリロですよ。それの元ネタがこれ」
吉良「それで、これはどういう意味なんですか?」
矢内「さあ?そんな深い意味とかはないんじゃないかな。歌詞の成り立ちも諸説あるし」
考えこむ一同
平 「今、このことについて考えていても答えは出そうもないな」
根間「そっちのボタンは?」
吉良「分からない。何も説明は無いし」
根間「押してみたら?」
平 「ちょっと待て。爆弾の件もある。むやみに触らないほうがいい」
根間「ちょっとビビリすぎじゃないの?」
平 「じゃあ聞くが、ボタンを押すことが私たちにとってマイナスにならない保証はあるのか?」
根間「……」
麻生「確かに、後で何か犯人から指示があるかもしれないし、とりあえずそっちの鍵で次の箱を開けてみたほうがいいんじゃないですか」
平 「そうだな。私もそう思う」
根間「……分かったよ。じゃあ次は俺の番だね。鍵、貸して」
鍵を受け取り、箱を開ける根間。
中からまたスマートフォンと折りたたまれた紙が。
紙には『弐ノ犠牲 根間恒彦 道ヲ捧ゲヨ』
根間「道を捧げよ、だって」
矢内「道?どういうことだろう。心当たりは?」
根間「よくわかんないけど……」
箱から出したスマホをいじる根間。
根間「これ、電話出来ないみたいだ。メールかな……?」
スマホを触っている根間の顔色が変わる
根間「これ……なんで……?」
平 「どうした?」
根間「こんなの送ったら俺、終わりだ」
吉良「何があったの」
無言でスマホを差し出す根間
吉良「……メールに写真が添付されてる。隠し撮りみたいだけど、これ…」
根間「マリファナだよ」
一同少しひるむ。
矢内「君、その年でそんなのやってるのか?」
根間「友達に勧められて、依存性もほとんどないからって……」
平 「だからって、犯罪だろう!」
根間「知ってるよ!でも、ちょっとくらいならって……ほんとにちょっとだけなんだ」
麻生「それで、その写真をどこへ送ることになってるんですか?」
根間「俺が通ってる学校。ご丁寧に俺の名前で状況を説明した文面まで作ってある。
こんなの送ったら退学だよ。大学だってもう決まってるのに……」
吉良「道……進路を犠牲にしろってことか……」
平 「それくらい、命があればいくらでもやり直しがきくさ」
根間「なにいってんだよ!退学だけで済むわけないだろ!下手すりゃ警察沙汰だし、友達だって巻き添えだ。もし俺が裏切ったってバレてみろよ。一生白い目で見られるだろ。もしバレなかったとしても、俺、どんな顔して会えばいいんだよ!」
矢内「だからと言ってここでこうしてても仕方ないだろう?」
根間「分かってるよ!分かってるからイラついてんだろ!!」
黙りこむ一同。
平 「この後も控えてるんだ。あまり時間を取るべきじゃない。
どんな状況だって、こんなところで爆死するよりマシじゃないか」
根間「……分かってるって。やるよ」
大きく深呼吸をする根間。送信ボタンを押す。
根間「……終わった。俺の人生終わった」
うなだれる根間。どこからか鍵の開く音が聞こえる。
爆弾のカウントダウンは刻一刻と進んでいる。
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