第51話 EPILOGUE



 ОUTLAW&KNIGHTSIDE 24

 共和国標準時ザナドウエデンスタンダードタイム 共和国暦RD30052年5月22日PМ12:19

 共和国首都星系第五惑星第三衛生星都第二高校キャピタルスターシステムフィフスプラネットサードサテライトせいとセカンドハイスクール1―Z《ゼータ》教室


 ”大仕事”を終えたジュウザ・ハーフウィット・フリーベンチャーは、学校の彼のクラスの教室でくつろいでいた。いつものように青い制服を着崩し左脚の上に右脚を置いて両脚を隣の列との間に投げ出しいる。

 雑多な人族の入り混じるクラスメイトを眺める目は、達成感と安堵で穏やかだが、どこか憂いもあった。

「ひさしぶりね、ジョン・・・君」

 クラス委員で人間イノセントで剃刀のように怜悧な美貌の眼鏡女子オルがジュウザに、学校での彼の偽名ジョンで声をかけた。

「……ああ」

 クラス委員に答えた仕草はどこか気だるげで疲労感を湛えていた。

 目敏く彼の疲労を見抜いたようでオルが訝し気に片眉を上げる。

「三日前まで学校を休んで一か月間特別実習に参加していたそうけど、そんなに厳しい実習だったの?」

「……いや……」

 一瞬口を開きかけたもののダミエッタ星の事件を思い出したくないらしく、ジュウザは右手をヒラヒラとオルに振った。

 オルは意外と空気を読むタイプなのか、それ以上追及しなかった。

「っ」

 ジュウザの視線を追ったオルが右手で眼鏡の蔓を摘まむ。

「ああっ、フレッド・・・・君。彼もお姉さんのエイリアス先輩と一緒に昨日まで学校を休んで実習に行っていたのよ。期間がほぼ貴方と同じなんて奇遇ね」

「…………」

 ジュウザはもちろん実習・・の真相を知っている。高校に復帰した日付に間隔タイムラグがあるのは、ジュウザはトレガーを斃したあとすぐ帰ったが、アンはいろいろとやること・・・・があったからである。

 いつものようにアンは朗らかに話しかけてくるクラスメイトに対応しているが、紅眼の奥には拭い難いおりと疲労がある。

 ついに耐えられなくなったようでレオハロードの王子が友人を振り切って立ち上がり、逃げるように教室から出て行った。

「どうしたのかしら? 彼らしくないわね。あっ、ジョン君!?」


 幸運にも人気のなかった屋上でアンは、臍までの高さの柵に両腕を置いてもたれ彼方を見やっていた。視線のさきには赤茶色の第五惑星があるが、彼の”見ている”のはダミエッタ星だろう。

 ジュウザは気配を立って屋上の入口からアンを眺めていたが、彼がいつまでも不動なのでついに歩み寄った。

「よう。暗ぇじゃねぇか、優等生」

 歩み寄ってくる気配を感じたときアンはうんざりしたようだったが、声でジュウザだとわかったらしくかすかに微笑む。

「ジョン君」

 ジュウザはアンの隣に立つと両腕を頭のうしろで組んで蒼穹を見やった。

「……貴方には関係ないことですがちょっといやなことがあったんです。……僕の善意と努力がかえって他人を不幸にしてしまいました」

 一般人(だと思っている)ジュウザにまさか事実を語るわけにもいかないので慎重に言葉を選んでいるようだが、やはり”親友”に苦しみを吐露したいらしい。

「…………。…………っ。……そうか」

 実際にはすべての事情を知っている若き宝探しは慰めを口にしかけたのか数回口を開閉させたが、彼の正体をアンに知られるわけにはいかないので「そうか」としか言えない。

 そのまましばし二人は無言でそらを眺めた。

「……実習に行ったさきで新しい友達ができたんです。ジョン君と同じぐらいすばらしい”親友”です」

「……おまえはいい奴だからな。きっとそいつもおまえを”親友”だと思ってるよ」

 数日ぶりにアンが少年に相応しい快活な笑みを浮かべる。

「はい!」

 励ますようにアンの肩を叩くとジュウザは歩き去った。

 二人の少年スピリッツの進む路は近く再び交差クロスするのだがそれはまた別の話である。






 CRОSS SPIRIT   END

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オレ、宝捜し(トレジャーハンター)。僕、騎士。立場も性格も両極端だけで協力して蛮族を倒します @kisugiaoi

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