オレ、宝捜し(トレジャーハンター)。僕、騎士。立場も性格も両極端だけで協力して蛮族を倒します
第47話 FINALPHASE CROSS SPIRIT OUTLAW SIDE & KNIGHT SIDE 21-②
第47話 FINALPHASE CROSS SPIRIT OUTLAW SIDE & KNIGHT SIDE 21-②
咆哮とともに魔方陣の描かれた床を蹴るジュウザ。
「
疾走するジュウザに
通常技では様子見もできないと判断したのだろう。いきなり必殺技を放つ。
トレガーの紅眼がキラと輝き、瞳が鋭さを増す。
身体から噴出した強大なオラティオが彼の前に強固な障壁を形成。
炎弾が五発まで障壁に跳ね返される。
だが、炎弾によって障壁も弱まっている。ジュウザの拳そのものである
素早く左手を動かし拳を掌底で受け止めるトレガー。
「くっ」
「驚いたな」
四災の槍司令官の顔に本物の賛嘆が浮かぶ。
「人族との
掌底に力が込められ万力に締めつけられるような強烈な圧迫に、拳が軋みジュウザが激痛に顔をしかめる。
「ぐっ」
口角を上げたトレガーの五体から突風の如き猛烈なオラティオが吹き出し、ジュウザが飛ばされる。
彼は空中で蜻蛉を切り、態勢を整え両足で着地した。
それを予測していたらしく間髪入れず追撃を放つトレガー。
「
無数のオラティオで形成された漆黒の楔が若き宝探しの全身を貫く。
「ジュウザさん!?」
ジュウザの身体が
「だっ、大丈夫だ。この楔は半
駆け寄ろうとしたアンをジュウザが開いた片手を向けて制す。
アンはたたらを踏んだものの立ち止まり、視線をトレガーに向けた。
依然四災の槍の司令は無表情だが、かすかに呼吸が荒くなり、薄く額に汗もかいている。
「…………っ」
身体ごとトレガーに向き直ったアンが拳を構え渾身のオラティオを燃やす。ジュウザとの一瞬の攻防でトレガーの強大さを理解したらしく、初手から最大の必殺技を叩き込むつもりのようだ。
「ハアアァァ、
アンの周囲に長剣を構えた無数の天使が浮かび、彼らが振り下ろした長剣の先端から白き閃光が疾る。
「っ」
トレガーの目が座る。彼の”眼”はレオハロードの王子の必殺拳の軌跡を、正確に見抜いているらしい。
トレガーが左手を幾何学模様を描くように小刻みに動かし、掌底で
「っ」
必殺拳が苦も無く受け止められたことでアンが渋面を浮かべ強く唇を噛む。
掌底で
「いい拳だ。大半の
「…………っ」
噛みしめる力が増したことでアンの唇から鮮血が滴る。決して臆してはいないものの、最大の必殺技が通用しなかったことで、攻め手を見つけられないのだろう。
オラティオを高めてようやく鋭穿痛止楔の拘束を振り解いたジュウザが、アンの隣に並ぶ。
「こいつを倒すのは一人では完全に無理だ。だが、二人なら!」
「…………っ! はい!」
一瞬で仮面を取り換えたようにアンの表情がパッと笑顔に変わった。
若き宝探しとレオハロードの王子が肩を並べて渾身のオラティオを燃やす。火が着いたようにように二人の身体がオーラに包まれる。
彼らのオラティオの強さに愉しい
一瞬の
「
回転するジュウザの左拳と弧を描くアンの左拳が同時にトレガーへ撃ち込まれる。
二人の選んだ戦法は必殺技を連続で叩き込んで”力”で押し切るではなく、小技を連続でかつ連携で繰り出して、トレガーに隙を作り”そこ”へ必殺技を叩き込むである。小技は必殺技より威力は劣っても迅速に繰り出せるので、手数は多くなる。また、一撃当たりの消耗が少ないという利点もある。
トレガーは今度は二人の攻撃を掌底で受けず、両の手刀で弾いた。
だが、それはジュウザとアンも予測済み。防がれた攻撃は陽動だ。
ジュウザは五指を揃えた右の抜き手を、アンは一回転しその勢いを乗せて右肘を、トレガーの顔面へ放つ。
「
再び両の手刀で攻撃を弾くトレガー。
「「っ」」
両拳で猛烈な
それでも固く閉ざされた鉄扉の如くトレガーの
突如後方へ飛び退るジュウザ。
単独で連打を続けるアン。
瞬きよりも短い刹那アンの身体に遮られトレガーの視界からジュウザが消える。
アンがいきなり前方へ倒れ全身を床に密着させる。
さしものトレガーも一瞬虚を突かれる。
その隙を突きジュウザが爪先から突貫。
「
騎馬槍の威力と鋭さを持ったジュウザの爪先がトレガーの額に肉薄!
直撃を受ければさしもの彼もただではすまない! これで決まるか!?
トレガーは驚異的な柔軟性で背を大きく逸らせ蹴撃を回避すると、そのままバック宙を繰り返して二人の少年から距離を取った。
「だっ、駄目か!?」
「いや、わずかに手応えがあった。浅手は負わせたはずだ」
ジュウザの言葉通り彼とアンに向き直った、トレガーの額からは血が流れている。
四災の槍の司令が額の傷に右手で触れ、血の付着した指先に稀物を見るような視線を注ぐ。
「……人族に流血をもたらされたのは三百年ぶりだ。それにしても……」
トレガーはわずかに眉根を寄せ目を細めるた。
「……すばらしい
「「…………」」
ジュウザとアンは一瞬視線を交わし紅い瞳を瞬かせた。二人は互いがなにをしたいのか、次になにをやるかが以心伝心でわかるのだ。二度拳を交わしただけの関係なのに、なぜわかるのか彼ら自身不思議らしい。
「万全の状態ならいざ知らずいまのの体調では私も本気にならざる得ないようだな」
ジュウザとアンを見据えたトレガーの双眸が鋭さを増し、五体から黒い炎の如きオーラが燃え上がる。
「「っ」」
吹き付けられる強大無比なオアラティオに殴られたような痛みと、焼かれたような熱さを感じた、ジュウザとアンの肌が泡立ち表情も強張り無意識に一歩退く。
ドミネーターの美貌が鬼面に変じ、彼を始点に急速に闇が広がる。
「うっ!?」「くっ!?」
ジュウザとアンは闇に呑み込まれると錯覚し、幻の咆哮を聞いた。
トレガーの周囲が無明の宇宙と化し、四災の槍の司令の背後に異星の巨神が浮かぶ。
「
巨神が神槍を投じる姿に重なってトレガーが拳を放つ。
闇のオラティオを極限まで凝縮した
「「うおおぉぉっ!」」
本能だけで左右に跳ぶジュウザ&アン。普段の”型”を守った美しい回避ではない。恐怖で逃げ惑う素人のような無様な跳躍。
だからこそ礫貫刺突黒神槍を躱せた。それは奇跡に近い。
「……こいつは……!」
「…………っ!」
四災の槍の司令の奥義は巨大な拳痕を残し、一枚の厚さが一メートルを超える強化鋼鉄と特殊鋼の隔壁を、数十枚貫いていた。
貫通痕のはるかさきで士官服の強闘鬼が腰を抜かしていた。
「……こんなもん食らったら身体が消し飛ぶぞ」
「……すごい……」
若き宝探しとレオハロードの王子の顔は蒼白で、こめかみを冷たい汗が滴り、同じタイミングでゴクリと唾を飲み込む。
とはいえトレガーも肩を上下させ、少なからず呼吸を乱し、鋭利な顎から汗を滴らせている。
「疲弊していなければ連射できるのだが、オラティオが充実するまで礫貫刺突黒神槍を放つのは無理のようだ。だが」
美しき蛮族の真紅の目が輝き、さきほどよりは劣るものの充分強大なオラティオが燃える。
眼前の空間になにかを描くようにトレガーの両拳が動く。
四災の槍の司令が腰を落とす。左腕を胸の前で構え、右拳を腰の脇に引く。
彼の周囲が宇宙に転じ無数の隕石が飛び交う。
「
光速で右拳を撃ち出すトレガー。同時に周囲の宇宙から複数の隕石弾が飛び出す。
「チィ!」「くっ!」
ジュウザ&アンは隕石の弾道を視認はできてはいるらしい。拳と脚で砕く。
だが、一発砕いただけで手足は麻痺。大きく姿勢が崩れる。
たちまち捌ききれなくなり二人にいくつもの隕石弾が直撃。
「ぐわあぁぁっ!」
「うわあぁぁっ!」
着弾の衝撃で後方へ飛ばされるジュウザ&アン。
特殊鋼の隔壁にめり込む。壁に人型を刻む。
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