第43話 FINALPHASE CROSS SPIRIT OUTLAW SIDE & KNIGHT SIDE 19ー②

ふいにルックがダニーへ視線を向け――両者の身長差は一メートル以上あるので見下ろす形になる――声をかけた。

「お主とは言葉を交わしたこともなかったな」

「ああ。だがチームでの立ち位置は同じのようだ」

 横目でルックを見上げダニーが偽悪的に口角を上げた。

子供ガキのお守りだ」

「なにを言う! わしはアン王子とプリトマート姫をそんな目で見たことはないぞ! まだ未成年でもお二人とも立派な大人でおられる!」

 どうやらこの反応を期待しての揶揄だったらしく、本気になって反発するルックに、ダニーが満足げに笑みを刻む。

「ガキでも大人でもいいがこいつらを倒さんと助けに行けんぞ」

「ぬぅ」

 銀河忍者が前方の蛮族へ顎をしゃくると、不本意ではあるがその意見の正しさを認めたようで、ドラゴノイドも唸った。

「向こうはこちらを足止めするだけでいいがこっちには時間制限タイムリミットがある。のんびりしてられん。あんたの戦いを見たが牽制陽動は俺の方が得意のようだ。俺が態勢を崩す。あんたが止めを刺せ」

「ぅ……。わかった」

 一歩前に出たダニーは瞬時にオラティオを練り上げた。それによって身体からオーラが吹き出し、次の瞬間身体が六つに分かれ大きく左右に広がる。

「おおっ!?」

六身分身シックスアバター

 超高速で移動し任意の地点に刹那留まることによる、視覚の錯覚を利用した技だ。

「!?」

 尋常ではない事態に危機を感じたのか蛮族達が、雄叫びとオーラを格納庫に轟かせ突貫した。

 突撃しつつ蛮族達が無数の拳圧や衝撃波、攻撃呪文を放つが、それらは大半が銀河忍者の幻影を突き抜ける。

「投操手裏剣」

 一人八枚。計四十八枚の手裏剣が光速に近い速度で、格納庫全域を駆け巡り蛮族どもを切り刻む。

「ぐわっ!」「ぎゃああっ!」「きゃっ!」「ひっ!」

 血煙と悲鳴、絶叫が戦鬼どもから立ち昇った。

獣配猛掌撃ビーステッドラム!!」

 蛮族達が怯んだ隙を逃さずオラティオを燃焼させていたルックが、すかさず必殺技を叩き込む。

 全身のオラティオが集中したことで、もともと大樹のようだったドラゴノイドの右腕はさらに太さを増しており、それによって前腕と肩を覆った装甲が軋む。その剛腕で強烈な掌打を繰り出す。

 戦艦の艦首突撃を思わせる拳圧と、オラティオの混合物の右回りの衝撃流が炸裂した。

 巨体の強闘鬼や走馬鬼までが肉片となって弾け飛ぶ。

「怯まないで! 大技を使ったあとは隙が生じるわ!」

 蛇女鬼が杖と髪を振り乱す。

 ドラゴノイドの顎が不敵な笑みを刻む。右腕に続いて左腕も怒張する。

「ぬん!」

 左腕からも左回りの獣配猛掌撃が放たれ、衝撃流が格納庫の床もろとも蛮族を轢断する。

「うおおおっ!」

 どちらも獣配猛掌撃を放ちつつじょじょに二つの掌を合わせていき、それに伴って二本の衝撃流も近づいていく。

 グローブのようなドラゴノイドの両掌が手首と手首で合体。

「獣配猛烈掌!!」

 二つの逆回りの衝撃流が重なったことで威力は単体の数倍に跳ね上がり、特に両者の接触面では巻き込まれた蛮族の肉体が、視認できないほど小さくすり潰された。

 破壊と殺戮の二本の螺旋が消えたとき、すべての蛮族は死骸となっていた。いや、死体が残っていればまだましだった。

 感心したの呆れたのかダニーが長い口笛を吹く。

「蛮族より暴力的だな」

「……自覚はしている」

 自覚はしていても認めたくはないのだろう。ルックの言葉は自嘲的で表情も憮然としていた。

 ダニーが右手を伸ばしてルックの肩を慰めるようにぽんぽんと叩く。

「気にするな。俺達忍者も似たようなものだ」

 そのようなことには無縁と思っていたダニーの意外な気遣いが嬉しかったのか、ルックがわずかに表情を緩める。

「ああ、だがこれで王子と姫の加勢に……」

 その言葉と二人の姿は爆発と閃光に飲み込まれた。

 事前に格納庫に強力な爆弾がしかけられていたのだ。 

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