オレ、宝捜し(トレジャーハンター)。僕、騎士。立場も性格も両極端だけで協力して蛮族を倒します
第22話 PHASE2 邂逅《エンカウント》 交わる路《クロスロード》 OUTLOW SIDE & KNIGHT SIDE 8
第22話 PHASE2 邂逅《エンカウント》 交わる路《クロスロード》 OUTLOW SIDE & KNIGHT SIDE 8
この遺跡の《あるじ》ともいうべきレリクスの鎮座する宝物の間は、無頼の
中型
室内全体がかすかに震えているが、それは数分後にこの場で発生する共和国、否、銀河全体の運命を左右する”邂逅”を祝福しているためか、それとも怯えているためか……。
宝物の間の入り口はぶ厚い二枚の白い石版でできた観音開きの扉であり、無地だが亀裂や剥離はおろか染みひとつもなく、霊的加護を享受していることを主張しており、扉と壁との間には剃刀一枚入れられる隙間もない。
しかし、ふいにぴったりと閉まっていた扉がかすかに震え、数秒後重い音と共にゆっくりと開いていく。
最初に入ってきた若き
ジュウザが声をかけるとゾーイとダニーも部屋に入ってきた。ダニーの表情は帽子の唾に隠れて見えないが、首が左右に動いているので戸惑っているようだ。対照的にゾーイは通路では逸っていたのに、入室した途端既知の情報を改めて確認して安堵した研究者を思わせる表情になった。
「……どうなっているんだ。これは?」
周囲を見渡しながら発せられたダニーの言葉にも警戒の響きが強い。
「近付くにつれて普通じゃない”気”感じてたが、数万年前に造られたはずなのに経年劣化がまったくない。強力な霊的加護で護られてるとしか考えられねぇ。こりゃここにあるのは単なる財宝じゃねぇぞ」
地上を目指す途中で迷い込んだ広間の状況に危険を覚えたらしくジュウザは警戒を強め、塵ひとつ見逃さない鋭さでもう一度周囲へ視線を走らせている。
兄と保護者と違い褐色の少女は室内に入ってから、身動ぎひとつせず食い入るような目で一点を凝視しており、顔からは焦燥と苛立ちが洗い落とされたように消え、永い旅路の果てに母に出逢えた幼子のような安堵と満足の表情だ。
妹の視線に気付いたジュウザがそれを追い、一瞬後目を見開く。
「こいつは……」
入り口の反対側の壁はその数メートル手前から二段高くなっており、中央の謁見の間ならば玉座のある位置は周囲よりさらに一段高くなっていて、一本の杖が石畳に突き立っていた。
杖の存在を認識したことでそれの放つ肌を刺すような神気も感じるようになったのか、ジュウザが無意識に左手の甲を右手で覆う。ダニーも右手で帽子をさらに深く被った。
とはいえ
ジュウザは杖とゾーイの間で二度視線を往復させたあと、数舜妹の顔で見やると、なにかを振り切るように頷いた。
「オレがいいと言うまで絶対近付くな」
妹を気遣う気持ちは強いが稀に見る宝を前にして――室内に目立った危険がないこともあり――宝探しの本能と好奇心をを抑えきれなくなったらしく、ジュウザはゾーイにそう指示すると彼女を振り返らず、ダニーと一度頷き合ったあと、二人でゆっくりと杖に近付いていく。
「…………!」
杖の傍に立った若き宝捜しは驚愕に顔を歪めた。
杖は樫でできていて先端が太く尾部にいくにつれ細くなっており、長さは二メートル近く(一般人の)女性や男性でも小柄な者ではもてあましそうで、一見主動力が牛馬の後進惑星の品のようだが、全体に所狭しとありとあらゆる神言語に
「間違いねぇ、レリクスだ。それもただのレリクスじゃねぇ。トゥアハー・デ・ダナーンの神々が直接創った準
「この部屋を古の時代の姿のまま保っているのもこの杖の力だろう」
ジュウザは最初杖の金銭的価値を考えたらしく紅瞳が金銭欲にぎらついたが、すぐに神々のレリクスなら彼の人生の目標である銀河最大の神具に関係のある
レリクスには反物質爆弾級の防御機構が施されていることが多いので、ジュウザとダニーはトランプタワーを扱うような慎重さで精査していく。
「どうやら防御機構はねぇみたいだぞ」
「それにこの部屋にはオラティオ感知して爆発するしかけもないようだ」
「”本命”がここにある以上もうオラティオを使った突破を警戒する必要はねぇからな」
予想外の大収穫にさしもの熟練の宝捜し二人も杖以外への警戒がおろそかになっていた。ゾーイが入り口を見張っているという油断もあったのだろう。
「っ」
直立したまま微動もせず杖を見やっていたゾーイの片眉がかすかに動き、背後を振り返った。
巨体を屈めて扉を潜り入ってきた茶色い鱗のドラゴノイドは、扉が開いていたことで先客の存在を予想していたらしく然程驚かなかったものの、すぐにジョウザ達に対して構えを取った。
ジュウザとダニーもルックのことに気付き杖から顔を上げ彼に視線を向けた。戦闘態勢のドラゴノイドに二人の眉間に皺が寄る。
「アン様、プリトマート様」
先客達を見据えたまま鋭い声を室外に放つ。
それによって彼ら以外の侵入者がいることを確信したようで、入室してきた姉弟は険しい表情だ。
姉の前に立つアンの顔を見た瞬間ジュウザの双眸は眦が裂けんほどに見開かれる。「フレッド……!」と零れかけた言葉を辛うじて堪えたが、全力疾走を崖の一c手前で踏み止まったような際どさだった。
しかし、このとき運命が音を奏でるなら、室内には天地を揺るがす壮大な
だが、アンはともかくジュウザはそれどころではなく探索中に、ましてや敵かもしれない相手の前でそんなことをするのは致命的事態を招きかねないのだが、目を擦り何度も眼前に立つ少年が、クラスメイトかを確認していた。
ふいにジュウザが天啓を得た顔になった。広大で数十兆の人口を擁する銀河には、友人とそっくりな
次の瞬間友人に自分の正体を知られるかもしれないと気付いたようで、若き宝捜しは慌てて
「ジュウザ、あの服は
アン達の服が埃と泥でひどく汚れていたのでいままでわからなかっようだが、ジュウザもその事実を認識したらしく頷く。
「…………っ」
健康体そのもののフレッド(=アン)が彼と同じく直近に一週間も学校を休んだこと、(校内の噂で聞いていた)生徒会長のエイリアス(=プリトマート)が一年のときからたまに何日も休むことがあったというのは、救星拳騎士の任務のためだったのだと理解したのだろう。納得のためわずかに精神が弛緩したらしくジュウザの五体からやや力が抜ける。とはいえそれは目の前にいるのがフレッド(とエイリアス)だという推測を決定的にしてしまったということで、彼は苦虫を噛み潰した表情で右の爪先で石畳を蹴った。
「! ゾーイ! こっちにこい!」
あまりにも意表を突く事態の連続に失念していた妹を、ようやく思い出したようでジュウザが叫ぶ。
褐色の少女はアン達を見据えたまま後方へ一跳びで五メートル以上――軽くオラティオを燃焼させた――跳躍し、兄の傍へ来た。
アン達はゾーイがオラティオを燃やしたことで、遺跡が爆破されるのではないかと思ったらしく一瞬身を強張らせた。だが、なにも起きなかったのですぐに緊張を解く。
「ここでは存分に暴れられるようですぞ」
ゾーイもフレッド(=アン)とエイリアス(=プリトマート)と面識があるので、侵入者が彼女の兄のクラスメイト(とその姉)だというはことはわかっているはずであり、妹が彼らにどんな反応をするか危惧しているのか、ジュウザが気遣わし気な視線をゾーイに向ける。
だが、彼の位置からは妹の背中しか見えず表情はわからない。
ダニーが二人を庇うようにジュウザとゾーイの前に出た。
彼にも通信端末に入っているフレッド(=アン)と一緒に撮った立体写真を見せたことがあり、来客が自分のクラスメイトであることに気付いているはずだと思い至り、若き宝捜しが渋面を刻む。
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