第14話 PHASE2 邂逅《エンカウント》 |交わる路《クロスロード》 OUTLAW SIDE 5-①
共和国内人族軍と蛮族軍の
オレとダニー、…………、…………非常に不本意だがゾーイはダミエッタ星に到着した。さすが最前線の星だけあり入星管理は厳重で、不法入星はもっと困難――なにせ惑星規模で防御シールドが展開されてる――だが蛇の道は蛇であり、偽造IDとビザで入星できた。
南半球にあるこの星で三番目に大きな大陸、通称第三大陸最大の
シャビィタウンという名前で人口は一万人に満たず、最盛期は鉄鉱石の採掘でそこそこ栄えたらしいが、いまじゃすっかり忘れられた町だ。かなり高緯度に位置しているが周囲を暖流が巡っているのと、ダミエッタ星は地軸が傾斜しており南半球の方が日照量が多いのとで、高温乾燥地帯で町は灌木もまばらな荒れ地と岩山に囲まれていて、二、三十キロ彼方は砂漠である。
町の建物の大半は石材や煉瓦、コンクリート製で椅子やテーブル、箪笥などの家具は木製が多く、道端には燃料や飼料となる薪や藁が積まれ、労働力あるいは食料である牛や馬、豚や鶏、名もわからぬ家畜が走り回っており、途上惑星の辺境都市を思わせるが実際は違う。共和国の星は一見原始的でもそれと現代的なものが同居しているのが常で、粗末な石造りの小屋の中にも数々の電子機器と、乾燥した厳しい気候でも快適に暮らせる装置が鎮座していた。
事実オレ達はいま道路に面したオープンテラスの一角にいるが、テラスの中央には高画質の
オープンテラスといっても屋外なのは三分の二で三分の一は屋内であり、けっこう広く十数席のテーブルが並んでいて、道路とは腰までの高さの木製の柵で区切られてる。もちろんこんな場末の町に席をすべて埋めるほどの旅行者が来ることはないが、この宿は食堂と酒場も兼ねているので、客の大半は町の住人だ。
と状況説明が長くなりすぎたな。オレ達三人はたったいまテラスの道路際の席で朝食を終えたところだ。
テーブルの対面でダニーが食後のお茶――自宅でも飲んでる黒い香ばしい薫りのお茶――を楽しんでいる。今朝会ったとき昨晩別れたときにはしなかった安物の女もの香水の匂いがしたから、早速この星の女を味見したようだ。
……そこまで気を使ってくれなくていいんだが。
いくら実力があってもおまえはまだまだ子供だと言われているようで、なんとなく面白くねぇ。乱暴にお茶をすする。
……いまオレは動きが取りにくい。
なぜかというと
「おい……」
離れろと強い意志を込めて妹を睨む。
「ダーメ! アニキ、なんとかしてあたしを置いてこうとしてるだろ」
……図星だ。この星へ着いてからいかにして宝を
探索に連れて行けばゾーイもチームの一員となり特別扱いはできなくなる。リーダーであるオレはメンバーが生還できるよう全力を尽くさねばならず、そこに肉親の情の入る余地はない。いや、入れちゃならぇ。それはチーム全体の破滅を招きかねない。しかし、半人前で甘ちゃんのオレにそれはできそうにない。
(親父ならどうだっただろうか)
そう考えているうちに身体にかかる妹の体重が増す。
「あっ……」
オレに体重を預けすぎたせいでオレのかけている椅子の脚が浮き、バランスを崩した妹の伸ばした右腕が、隣のテーブルの上に積み上げられていたものを崩しかけたので慌てて支える。
……まったく遺跡でこんなミスをしたら死に直結しかねねぇぞ。
隣の席でパイプから紫煙を立ち昇らせていた小柄な爺さんに睨まれた。いかにも
「…………っ」
他の客の視線も痛い。肌と髪の色の違うオレとゾーイは兄妹には見えないので、若い
《……ただいま
救星拳騎団の拳騎士は一人が
「アーニーキー」
ゾーイが胸を押しつけてきて顔が双乳の間に挟まれるいわゆるパフパフの態勢になった。妹が十代半ばの少女らしい溌溂とした表情で、臍だしタンクトップにジャケット、ショートパンツの闊達な格好でなかったら、商売女と間違われてるぞ。
「おい、いいかげん……」
強引に妹を引き剥がして隣の椅子に座らせ、目を覗き込みハッとした。空色の瞳にさまざまな
「……ゾーイ?」
探るように宥めるように右手で髪をすいてやると一瞬目を見張ったが、すぐにオレの指の感触に委ねるような表情になる。
(はじめての
そういえば昨日この星系に
「ゾーイ、おまえ……」
妹へ向かって身を乗り出した刹那延髄が心臓の鼓動のように激しく打った。いままで幾多の死地で命を救ってくれた、
勘に導かれて南西の空を睨む。この星の太陽は西から昇るのだが、日輪の傍に米粒ぐらいの黒い染みがある。
「アニキ……?」
ゾーイはまだ気付いていないらしく怪訝な表情だが、さすがにダニーはオレとほぼ同時に異変を察したようで厳しい視線を空に向けていた。
宿屋とその外の町に住人にはまだ状況を理解している者はおらず、町外れの物見
「っ」
空いた椅子に置いておいたショルダーパックから、
「
「えっ!?」
妹を無視してダニーを見やると、彼も眼から電子双眼鏡を外したところだった。
「四百メートル級だ」
「あのクラス、種類の揚陸艦が単独で現れる目的は九十%威力斥候だ」
話している間に視界の中で染みは急速に大きくなり、一般人でも肉眼で視認できるようになったので、町では
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