オレ、宝捜し(トレジャーハンター)。僕、騎士。立場も性格も両極端だけで協力して蛮族を倒します
第7話 PHASE1 二人の少年 KNIGHT SIDE2-② OUTLAW SIDE3 KNIGHT SIDE3-①
第7話 PHASE1 二人の少年 KNIGHT SIDE2-② OUTLAW SIDE3 KNIGHT SIDE3-①
後頭部に軽い衝撃を感じ一気に視界が開けました。
不覚にも眠ってしまったのを誰かが起こしてくれたようです。周囲を見やると僕が居眠りしていたことに気付いている人はいないようでした。生徒会で優等生の僕が居眠りなんてしたら、日頃の意趣返しと糾弾する人もいるはずなのに、秘かに起こしてくれるなんて親切を誰がしてくれたのでしょうか?
ふいに一人の顔が浮かびました。
視線を向けるとジョン君が苦笑を浮かべて僕を見やっています。
……本当にジョン君はいい人です。心からの感謝を込めて彼に向けて右手を立てます。
ジョン君も親指を立ててくれました。
ОUTLAWSIDE 3
オレは校門横の壁に背を預けて腕を組み、一緒に帰る約束をした相手を待っていた。空は半ば赤くなっており風もやや冷たくなっていた。
目の前を通り過ぎる女生徒達が
約束通りの時間に上空から一台の大型スピーダーが滑り込んできて、眼前で盛大に土煙を上げて停車した。
運転していた制服姿の少女がヘルメットを脱ぎニカッと笑う。
「お待たせ、アニキ!」
こいつはオレの妹のゾーイ・エデン・フリーベンチャー――学校ではアシュレイ・スミスという偽名を使わせてる――だ。年はひとつ下の十五で肌は褐色、大きな目は端がやや釣り気味で瞳の色は海を思わせる深く透明な蒼、肩までの髪は――黒人の髪は酷く縮れてるもんだが――白人が羨みほどさらさらで金色だ。顔立ちは愛らしく表情は勝気そう――実際スッゲー気が強い――で、額の中央と左頬に幾何学模様にも文字にも見える入れ
細身だが女だてらに大型スピーダーを乗りこなしてるだけあり、身体は引き締まっている。
なんで兄妹なのに肌、髪、瞳の色が全部違うのかって? 血は繋がってねぇんだよ。
「ああ」
軽く右手を上げて応えると足元に置いてあった鞄を手に取り、スピーダーに歩み寄る。無言でゾーイが尻をずらしてタンデムシートに下がり、オレはいままで妹が座っていた
両腕をハンドルに伸ばす。このスピーダーは妹ではなくオレの愛車であり、白に二筋の青いラインが走った車体は全長二メートル重量三百キロを超える。エンジンが
「いくぞ」
「うん」
臍に妹の両腕が回され、背中に張りのある二つの大きな膨らみが押し当てられる。
アクセルを捻るとスピーダーがフワリと浮き上がり前方へ飛び始めるが、速度は六十キロほどなので風圧は弱い。もちろんオレは普段こんな優等生なスピードではなく、三百キロオーバーで複雑に湾曲した狭い峡谷を飛翔してスリルを愉しむ。だが、妹が一緒じゃそんな
足の下を朱色に染まった穏やかな田園風景が流れていく。高度も低めなので農作業中の農夫や通行人をはっきりと視認できる。
ふいにゾーイが身を乗り出してヘルメットを擦りつけてきた。
「おい、危ねぇ……」
「アニキ、元気そうじゃん」
「?」
「また
「…………っ」
唇を噛む。
「学校でいいことでもあったの?」
心にクラスメイト達の穏やかで闊達な日常、次に
「アニキの心配なんて百年早えーぞ!」
妹の気遣いは嬉しかったが内心を見透かされたことが、気恥ずかしく癪でもあったので、後ろ手でメットに覆われたゾーイの頭をコツンと叩き、スピードを上げた。
家ではもう一人の家族が待っている。
KNIGHTSIDE 3
一日の授業を終えた僕は会議室で生徒会の仕事をしています。もちろん既知の情報ばかりでも、二時間目以降の授業も真面目に受けましたよ。
会議室をはじめとする生徒会関連の施設はすべて、中央の
もちろん僕達生徒会役員と清掃ドロイドが小まめに掃除整頓しているので、塵ひとつ落ちておらず、創立以来の学園の催し物の情報を記録した書籍やディスクも、髪の毛一本入る隙間もなく、本棚に収まっていますよ。
「フレッド。ここ
口調こそ硬いものの暖かみのある言葉をかけられて、声の主を見やりました。
僕から見て左側、長方形のテーブルの狭い方の辺に一人の女生徒が座っており、彼女は電子ペンは握ったままでしたが、ノート代わりのAI端末から顔を上げ僕へ視線を向けていましたた。表情から感情は窺えませんが、碧眼には気遣いと労わりがあることが僕にはわかります。
軽くウェーブのかかった長く豊かな金髪で、肌は新雪の白さであり、細面で顎は鋭角です。理想的な長さと細さの眉、すっきりと通った鼻梁、なにも塗っていなくても唇は
凛とした表情もあり完成された美術品ような硬質な美しさを持ったこの女性は、星都第二高校生徒会長で三年生のエイリアス・ブロッグスです。姓からわかるように僕の姉です。
「っ」
一時間目に居眠りした記憶が蘇り、それがきっかけで子供のころ悪戯を姉に見抜かれたことを連想してしまい、頬が熱を帯びた僕は羞恥をごまかすために頭をかきました。
「その……、一時間目に居眠りしてしまったんですが、教師ドロイドとクラスメイトに気づかれる前に、友達が起こしてくれたので大丈夫でした」
姉の瞳の気遣いの色が濃くなりましたが、同時に
「そうか。良き友だな。誰だ?」
「ジョン君です」
途端に姉の眉間に皺が寄り双眸にも嫌悪が浮かびました。
「あの不良か。私はああいうタイプには好感が持てんな」
友人を蔑まれて軽い怒りを覚えます。
「姉さんはジョン君を誤解しています。彼は優しくて友人思いのいい人です」
「わっ、わかった。わかったから機嫌を直せ」
宥めるために広げた両掌を僕に向かって振るプリトマートの顔には、あきらかな焦りがあります。姉は常に冷静沈着で超然としているのですが、昔から僕が怒ると慌てます。他の兄妹にはそんなことはないのになぜなのでしょうか?
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