第6話 PHASE1 二人の少年 OUTLAW SIDE2-② KNIGHT SIDE2-①
僕がレオハロードの王子で
声をかけてくれた人は生徒会の先輩の二年生です。僕は生徒会に所属しているのです。共和国の学校は基本的に年の変わった一月に新学年に移行するので、働きはじめて三か月です。
頭上から
それらの背後の空は半分近くが首都星系の第五惑星である、赤茶色の巨大なガス惑星ゼイトニングで占められています。共和国で核融合炉用いられていたころは、その大気は欠かせないエネルギー源でしたが、現在は太陽と水素、物質と反物質の対消滅が主なエネルーなので必要とされていません。いま僕が立っているはゼイトニングの第三衛星であり、この星は直径こそザナドゥエデンに近いですが、本来人が住めるところではなくテラフォーミングで現在の環境になりました。といっても三万年以上前のことですけどね。
ここで共和国の
ザナドゥエデンには衛生がひとつあり、共和国以前の宇宙進出初期には星系の他の惑星への橋頭保でしたが、遠い昔にその役割を終え、首都惑星で働く人々保養地になっています。第一惑星と第二惑星は太陽に近すぎるため、共和国の技術でもテラフォーミングが不可能であり、利用価値や資源もないので放置されていて、わずかな観測用の基地やコロニーがあるだけです。
第四惑星アレフレイムはザナドゥエデンとほぼ同じ直径の紅い星で、テラフォーミングされて共和国軍の総本部が置かれており、全土が軍事施設化要塞化されていて、共和国の軍事の要です。第六惑星はゼエイトニングに近い大きさのガス惑星で、周囲をザナドゥエデンが五つも入る巨大なリングで囲まれており、いくつもある衛生の何個かはテラフォーミングされ、何十億という人族が住んでいます。
第七第八惑星は第一第二惑星と同じ理由で開発されていなくて、若干のコロニーと基地があるだけです。
話している間にスクールバスが前方に着陸しました。
空気音とともに扉が開き学友達が降車してきます。僕とさきほど声をかけてくれた先輩、その他数名の生徒会役員とドロイドが彼らに駆け寄って、校則違反の物品を持ってきていないか調べます。学友達のプライバシーを侵害するようで心苦しく、彼らに極力不快感を与えないよう配慮します。無論女生徒にはいっそう細心の注意を払いました。
いま僕が担当した方からは問題のある物は見つからず、ドロイドもOKの青ランプ――悲しいことですが銃器を持ってくる生徒もいるので武器センサーでチェックします――を点灯させました。
「問題ありません。失礼しました」
生徒達が次々と入っていく星都第二高校の校舎は
「っ」
スクールバスから出てきた女生徒の足元がおぼついていません。と思った次の瞬間彼女は大きくよろめきました。
「危ない!」
咄嗟に駆け寄って抱き止め、女生徒が地面に額を打ちつけるのを防ぎました。
「大丈夫ですか!?」
こちらを向いた彼女は顔色が悪く、目の下にくっきりと隈もできていました。制服は緑のジャケットは腰に巻き、白いワイシャツの襟は第二ボタンまで外して両袖は肘まで捲り、黄色のスカートも通常より短く、非常に闊達な着こなしをされているので、新鮮な果実の中にひとつだけ痛み萎びた果実があるような違和感を覚えます。
「ご病気なのですか!?」
「……うん。だいじょーぶ。ただの寝不足だよ」
「しかし、そのご様子は……」
僕を安心させようと彼女が事情を話しはじめました。
「心配してくれてありがとね、イケメンさん。あたしの親父軍人でさ。数日前からダミエッタ星に派遣されてんだよ。あそこ最前線でスッゲー戦死率高いだろ。だから心配でろくに眠れてないんだよ」
「……………」
脳裏に数日前まで滞在していたダミエッタ星の風景が浮かびました。
「……とにかく保健室へ行きましょう」
首のうしろに右腕を膝の裏に左腕を入れて彼女を抱きあげます。
生徒会の先輩に手短に事情を話し僕は歩き出しました。
(僕がダミエッタ星でドミネーターの士官を一人でも倒していれば、この人の父親が戦死する確立を少しでも減らせたんだろうか……)
口内に苦味が広がり女生徒の身体を本来よりずっと重く感じました。
女生徒を保健室へお連れしたあと、僕は在学している一―Ζの教室へ向かいました。
「…………」
暗澹とした気持ちのまま教室の前へ到着しました。あと一歩踏み出せば自動ドアである扉が開きます。
「っ」
クラスメイトに心配をかけるわけにはいかないので、無理矢理爽やか表情を作ります。
(よし!)
扉の前の床を踏むと駆動音がして自動ドアが開き、音に気付いた学友達が僕へ振り向きました。
「おはようございます」
教室へ入った僕にクラスメイト達が笑顔で声をかけてきてくれたので、一人一人に丁寧に返礼します。
一通り挨拶を終えると僕の視線は一点で止まりました。会うのが愉しみだった彼がいつもの席にいました。
歩み寄ると彼の方から挨拶をしてくれました。
「おはよう、フレッド」
椅子の背に身体を預けくつろいでいたのはジョン・スミスという
「「優等生のおまえにしちゃ遅かったな。生徒会の仕事でなんかあったのか?」
「はい、校門のところで貧血で倒れた女生徒がいて、保健室まで付き添ってたんですよ」
「へぇ、ラッキーじゃねぇか。送り狼したか?」
一瞬なにを言われたかわかりませんでしたが、数秒後意味を理解し、顔がカーッと熱くなりました。
「そっ、そんなことするわけないじゃないですか! はっ、犯罪ですよ! ジョン君は僕をそんな人間だと思ってるんですか!?」
「冗談だよ」
本気ではなかったことを示すために、彼は両腕を広げ肩を竦めています。
「まったくジョン君は。悪趣味な冗談はやめてください」
彼はいつも僕をからかいます。きっと僕のことを玩具のように考えているのでしょう。……いくら僕でも他の人にそんなことをされたら不快になるのですが、ジョン君だと不思議といやには感じがしません。
「それでその女は大丈夫だったのか?」
……やっぱりジョン君はいい人です。ぶっきらぼうでも女生徒を案じています。胸が暖かくなり心に立ち込めていた
「はい。保険医の方によれば睡眠不足が原因なので、しばらく保健室で休めば心配ないそうです」
チラと時計へ視線を走らせると、もう始業開始まで一分もありませんでした。
「学習用の
「オレのオカンか! てめぇは!?」
言葉を紡ごうとしたのですが教師ドロイドが入ってきたので、自分の席は向かいました。
一時間目の授業は歴史で共和国の起源と神々です。初頭部の一年から何十回も受けて熟知している内容なので、クラスメイト達は多くが居眠りしています。
「…………っ」
実はダミエッタ星の任務を果たしたあと、初任務で慣れていなかったこともあり、
…………………………。
………………
……っ。
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