第4話 PHASE1 二人の少年 OUTLAW SIDE2-①
始業前の時間、オレ、ジュウザ・ハーフウィット・フリーベンチャーは在学している
「
オレは高校ではジョン・スミスという偽名で、
……それに親父の方針でもある。
「あー?」
気だるげに視線を上げるとクラス委員で
こいつの席は一番廊下に近い列の最前列だが、一番窓際の列で最後尾のオレのところまでわざわざ注意しにきたのだ。ご苦労な話である。
「ほら、こんなに足を広げてたら他の生徒の通行の邪魔になるわ」
オレは傾けた椅子の背にもたれ、左脚の上に右脚を置いて両脚を隣の列との間に投げ出して座っている。学校指定の青い制服も上着の丈は通常は足の付け根までだが、臍までに短くして両袖は肘まで捲り、胸のボタンを二つ目で開けてかなり
オルは粘着質かつ嫌味な性格で逆らうとネチネチ延々と小言を言われる。そんなことをされちゃたまらないので、オレは唇を尖らせながらも脚を引っこめ、姿勢も正した。
満足気に頷くと奴は自分の席に戻っていく。
オレはその背に思いっきり中指を立ててやった。
「っ」
オレは再び心身を
教室は一辺二十メートルの正方形でオレの席から見て左側が廊下、右は校庭に向いており採光のため壁全体が透明になっている。前方には電子黒板と教壇、教師席と
……それでも元気盛りの
生徒数は五十名で内訳は
っていきなり種族名だされてもわかんねぇよな。悪ぃ悪ぃ。
アールヴってのは
ドウヴェルグは反対に首都惑星よりも重力の強い惑星の出身で、その環境ゆえ人間より背が低く体躯も頑健だ。母星が非情に高温で火山も多いので、なんとその身体は一千度(!)までの
最後のスクィーレルは身長一メートルに満たない直立した栗鼠みてぇな種族で、全身が茶色のフサフサした体毛で覆われ――夏はスッゲー暑いらしい――、掌と足の裏に猫みてぇな肉球がある。出身惑星はよくわかってねぇ。ぬいぐるみみたい容姿からトゥアハー・デ・ダナンの神々が愛玩用に創ったんじゃねぇかって説もあって、実際人権意識が発達する前は他の種族や
知能は人間に劣らないが見た目通り非力で動きも鈍重、手先も不器用だ。それじゃいいところがないじゃないかって? あせんなさんな。神々はちゃんと考えてくれてる。スクィーレルはAIとの親和性が極めて高いのだ。共和国のインフラや軍事を司る量子コンピューターを扱わせたらこいつらの右に出る者はいねぇ。ゆえに九割がコンピューターエンジニアかハッカーになる。オレのクラスメイトもすでに両こめかみにAIケーブルのソケットを、額に光通信の受信装置を埋め込んでる。
こいつらみんな高一だが当然種族ごとに年齢は大きく異なってて、ドウヴェルグは
「っ」
クラスメイト達の姿を見ているうちにいつの間にか口元が綻んでいた。なぜかはわからねぇがオレは宝捜しの達成感とスリルと同じくらい、こいつらの平和な姿を見るのが好きだった。
チラと電子黒板の上方へ視線を向けると、時計の液晶画面にAM8:57と表示されていた。始業はAM9:00だからあと三分で授業がはじまる。
(あいつ遅いな。生徒会の仕事が長引いてんのか?)
チラチラと何度も教室前方と後方の扉――どちらも自動ドアで授業中はロックされ教師にしか解除できない――を見やる。
苛立たちと心配で右の爪先を上下させていると、前方の扉がシュッと開く。
現れた生徒を見てオレは軽く安堵し肩の力を抜く。
入ってきた人間の男子生徒は爽やかな笑顔で、話しかけてきたクラスメイトに挨拶を返すと、自分の机のフックに鞄をかけ……、真っ直ぐオレの所へやってきた。
「おはようございます、ジョン君」
まるでティーンズ雑誌の少年モデルのような清涼で透明感のある、誰にでもこいつはいい奴だと確信させる笑顔である。
「おはよう、フレッド」
こいつはフレッド・ブロッグスっていう。陽光のように眩しい金髪に
「優等生のおまえにしちゃ遅かったな。生徒会の仕事でなんかあったのか?」
照れたように頭をかくとフレッドははにかんだ笑みを浮かべた。
「うん、校門のところで貧血で倒れた女生徒がいて、保健室まで付き添ってたんですよ」
「へぇ、ラッキーじゃねぇか。送り狼したか?」
一瞬キョトンとしたものの次の瞬間言葉の意味を理解したらしく、フレッドは茹でた
「そっ、そんなことするわけないじゃないですか! はっ、犯罪ですよ! ジョン君は僕をそんな人間だと思ってるんですか!?」
本気でパニクって唾を飛ばして弁明してくる。
予想通りの反応にニンマリした。こいつをからかうのは実に面白い。
「冗談だよ」
「まったくジョン君は。悪趣味な冗談はやめてください」
フレッドは胸の前で両腕を組んで肩をそびやかしている。一見怒っているようだが口元は綻んでる。だからそこオレも安心してからかえるんだ。
おっと大事なことを訊くのを忘れてた。
「それでその女は大丈夫だったのか?」
「はい。保険医の方によれば睡眠不足が原因なので、しばらく保健室で休めば心配ないそうです」
一瞬時計を見やったあとフレッドは、
「学習用の
一時間目の授業が始まったのでフレッドも自分の席に戻り、オレも机に学習用端末を開いていた。
脳にAIチップを埋め込んで直接データを
とはいえオレも含めて――クソ真面目なフレッドとオル以外――誰も電子ペンを握ってないし、話も聞き流している。内容が
ビヤダル――現在の共和国でも酒の容器として生き残ってる――型の胴体に二対四本の腕を持つ教師ドロイドが、教卓の上を
ドロイドが教卓の中央で停止して胴体中央の
共和国の起源と神々の授業で必ず使われる立体アニメ、
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