2章-4

「へーえ、がんばるねえ」

「……だな」

 河合の行動力に素直に関心している三島とは対照的に、光一は不満を覚えずにはいられなかった。

 光一が河合から免許を取りにいく話を聞かされたのは、決勝戦を終えた帰りのバスの中だった。もともと夏休みに入ったらすぐにでも行くつもりだったのが、予想外に勝ち進んでしまったために延び延びになっていたのだという。今日で部活も引退したことだし、晴れて予定通り事が運べるというわけだ。

 すぐさま免許を取りに行こうという気になれることが光一には理解できなかった。河合だけではない。補習に出ている連中や、女子のレオタード姿に鼻の下を伸ばしている三島にしてもそうだ。

 ……どうして、そう簡単に気持ちを切り替えることができるんだ。薄情なやつらだよな、まったく。

 元チームメイトたちに対して心の中で舌打ちしていた光一に、さらりと三島は訊いた。

「山口はどうしているんだろうね。彼も補習には出ていないようだけど」

 その名前を聞いた瞬間、光一の表情が険しくなった。

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