第5話 出発準備 その2
第三特別資料室に戻ると、俺はすぐにリーンへ指示を出した。
「荷馬車はアンチマジックシールドがはめ込まれたものを使うからすぐに手配してくれ」
「はあ……」
「それから、エクストラヒールのスクロールを3本、高出力範囲魔法のスクロールは5本……、いや、10本申請するんだ」
「やりますけど、通らないと思いますよ。最近の資材部は特にケチですから」
どちらも貴重な備品なので、よほどのことがない限り支給はされない。
「やるだけやってみてくれ。もちろん、口頭でレギア枢機卿の特別任務だと言い添えるんだぞ」
リーンが首をひねって俺の方を見つめている。
「なんか急にやる気になっていません?」
「そ、そんなことはない。俺はいつだって任務遂行には全力で当たっている……」
「よく言いますね。先日も仕事はだいっきらいだぁ! って喚いていたくせに」
「嫌いでも、いつだって任務は遂行しているんだよ」
「まあ、そうですけど……」
おかげで出世して、とんでもない部署に入れられているのだ。
「……原因は女ですね」
「なんのことだ?」
「聖百合十字騎士団に好みのタイプの女騎士がいたんでしょ!?」
完全に外れた読みではないが、彼女が考えているようなものじゃない。
「誤解だ」
「いーえ、絶対に女です。それでやる気を出しているんだ。そうに違いない!」
勘が良いのだか、悪いのだか……。これはプライベートなことなので、リーンにもミリアとの関係は内緒にしておこう。
「私には手を出さないくせに、聖騎士団の騎士に恋をするなんて! キーッ、この浮気者!」
リーンには手を出していないんだから浮気じゃないだろうに。
「バカなことを言ってないで手続きを頼むぞ」
「あ、ちょっと、まだ話は終わっていませんよ! どこに行くんですか?」
「俺はシルバーシップの貸し出し許可を取ってくる」
「シルバーシップって、あの
「あいつなら役に立つからな」
「あんなわがまま馬をどうしろっていうんです? まあ、クロードさんにだけは懐いていますけど……」
シルバーシップは神殿所有の超有能な天馬だが、命令に従わないことでも有名だ。誰も利用しないから、貸し出し許可はすんなりと降りるだろう。それに俺とは仲がいい。馬だけにウマが合うというやつだ。
そもそも他の奴らは間違っている。シルバーに命令は禁物なのだ。丁寧にお願いすれば、あいつはいうことを聞いてくれる。たまにヘソを曲げて、絶対に譲らないこともあるのだが。
「シルバーシップまで使うだなんて、本当にどうしちゃったんですか? こんなにやる気のクロードさんを見るのは久しぶりです」
「そんなことないぞ……。あ〜だるいなぁ……」
俺はやる気のない演技をしながら、申請届を出しに部屋をでた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます