第7話 依頼②

女騎士「ミュリエル・ウェイレット」は自分自身でも困惑していた。


[酒場にいた得体のしれないやつに私は何を言っているのだ?]


そう思いながらも、ミュリエルは自分の直感というものを信じていた。

パトリシアの護衛をずっとやってきたが、自分の直感で助かったことも多々あった。


しかし、直感だけでいいのかという思いもある


目の前の便りなさそうに見える男は、複数の男たちから囲まれても、一切攻撃を受けず、剣も殺気がないと言う理由で避けもしなかった。

ミュリエルは自分ほどでは無いが、そこそこできる男だと思った。


[どちらにせよ、現状では自分以外、信用に足る人物はいないがな……最悪切り捨ててもよいか]


などと打算的に物事を考えていた。

しばらく考え込んでいたエドが口を開く。


「悪くない条件ですが、こちらから一つ条件をだしてもいいでしょうか?」


条件?

ミュリエルの片眉が怪訝そうに上がる。


「人を殺さない、ただそれだけです。俺も、そしてあなたも」


[なんて甘い男なんだ]


ミュリエルは、心の中でエドを見下した。


[しかし、他に頼れるものもいないのは確かだ]


「わかった、しかしパトリシア様のお命が危ないなら私は躊躇せず殺す」


渋々ながら、ミュリエルはエドの条件を飲んだ。

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