第5話 出会い④

頼み事があると言われてエドは困惑していた。


なるべくなら面倒事に巻き込まれたくない。

今までも、それだけは貫いてきたつもりだった。

弱そうに見せるのもすべてそのためだけに身につけたものだった。


「俺は面倒事には巻き込まれたくないんだ」


そうきっぱりと言い放つ。


「貴様それだけの技量がありながらなぜ?」


女騎士はただ純粋に疑問を投げかけてくる。

ちなみに紳士風少女はこのやり取りの間暇なのか、路地裏の野良猫と戯れていた。


「ただ、平穏な生活……それだけが俺の願いだ」


「なるほど、では提案がある」


女騎士は少しだけ口の端を上げて言った。


「我々の力になってくれるなら、平穏な生活を保証しようではないか」


「そんなことできるわけが……」


「いいや、我々ならできる」


と言いながら、女騎士は目元を覆っていたマスクを外した。

少し目元はキツめだが、路地裏の暗がりにおいてもその美貌はよく分かるほどだった。

そして、紳士風少女にもマスクを外すように促す。


「ん?外してよいのか?」


野良猫と戯れていた紳士風少女はエドの方を向くと、マスクを外した。

その顔は思っていた通り整った顔立ちをしていたが、それ以上に見知った顔でもあったのだ。


「パトリシア王女?!」


そう、紳士風少女はアルストル大陸における5大王国の一つ「サイラス王国」の王女様だったのだ。

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