第1章

第2話 出会い①


エド・イティスは困惑していた。


ほんの数分前まで、美味しそうな料理が並んでいた机を前にしたのに、今はなぜこんなことに巻き込まれているのか事態を把握できずにいた。



どがぁぁぁん!!!



ぱりーーーん!!!



「「「おらぁぁ!!」」」



酒場の中を、破壊音と屈強な男たちの声が埋め尽くす。



「お前達観念しなさいっ!!」



ビシィという効果音が聞こえて来そうな勢いで、指を突き出す少女がその喧騒の中心に居た。


目元を隠すマスクをしているが、整っていそうな顔立ちの少女だった。


年の頃は十代後半ぐらいか。


紳士のような服装の上に、黒いマントを羽織っている。


[あっ、俺が頼んだミートボールが……]


エドが頼んだ机の上のミートボール煮が、少女によって吹き飛ばされた男の体がぶつかったショックによって宙を舞う。


いや正確には、紳士風少女の近くにいる別の少女の手によって吹き飛ばされたのだ。


こちらの少女も目元にマスクをしているが、格好は騎士風というか完全に鎧を着込んだ騎士だった。


手には、刀身も柄も黒い片手剣を携えている。



「お嬢様に指一本でも触れてみろ、、、斬る」



[いや、さっき飛ばされた人絶対に斬られてますけど]



エドはそんなことを思いながら、どうにかして酒場から出る方法を考えていた。


ちらっと視線を向けた先には、少女2人組が壊した壁があった。


そう、数分前轟音と共に壁が壊れた、いや壊して少女2人組が入ってきたのだった。


で、あれよあれよと言う間にエドの隣の席に座っていた男たちを吹き飛ばしたのだ。



[俺が一体何をしたっていうんだ、大体昼間の武器屋にしても……]



「そこのあなた大丈夫っ!!」



エドはお得意のネガティブ思考に囚われていたが、紳士風少女の声で我に返った。



「えっ?!ぼ、僕?」



久しぶりに人と話すエドは、少し噛みながら答えた。


何故か指をこちらに向けて指している紳士風少女を見る。


光の加減で赤っぽく見える茶色のロングヘアーをなびかせて、紳士風少女はエドを見ていた。



「あなた!さっきの男たちに絡まれていたでしょ!助けてあげたわよ!!感謝しなさいっ!!」



「えっ??」



エドはあまりの衝撃で声がうわずってしまった。


全然絡まれていない上、なんなら少女たちのせいで、楽しみにしていたミートボール煮を台無しにされていた。


意味がわからず頭の上にはてなマークを飛ばしていると、いつの間にか復活していた男たちがこちらを睨んでいた。



「お前仲間なのか!!」



男たちの怒りは完全にエドへと向けられていた。

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