「令和版我輩は猫である」

 我輩は猫である。名前もちゃんとある。

 なかなか気に入っている。

 平成の一時期には、『きらきらねえむ』なる変わった特徴の名前が一世を風靡ふうびしたと聞き及んだが、我輩の名前はそんな影響を受けず、品のある名前で安心している。


 今は、令和というのだったか。良い時代になったものだ。

 何より、人間と仲良くしていれば、食事に寝床、健康さえも保証してもらえるのだから。


『最近のは媚を売りすぎだ』とぼやく先輩猫もいるが、しょうがないだろう。人間はしっぽが無く、鼻もあまり効かないらしいのだから。

 それに彼らだって、仔猫のように甘え声を出すのを我輩は見たことがある。

 まぁ、しょうがない。人間は我々より、ずっと鈍感なのだから。


 …ふむ、同居人達が帰ってきたようだ。

 ******************************


「ただいまー!

 あ!センセイ、お出迎えに来てくれたの?

 ありがとねー


 今日は、おやつ買ってきたよ!

 …ぷっ、ふふ、どうしたの?

 そんなに笑顔になっても、今はあげないよー!」


 彼らののっぺり顔は、きっと我々のしっぽの代わりなのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る