第2話 シーン1〜6
シーン1
白い画面からズームアウトして行くと、白衣を着た恵子の後ろ姿。
場所は岡村ハム東京工場の品質管理室。
顕微鏡や培養器が並んでいる。
覗いていた顕微鏡から目を離し、振り向く恵子。
恵子 「星野さん、A-76の食品サンプルの培養結果、どうだった?」
星野 「あ~、あれ?ちょっと待って。A-76っと、あ、これこれ。結果は基準値の28パーセント、合格ね。鈴木さんの方はどう?」
恵子 「今の所問題無さそうね。培養器に入れて結果を待つわ。あ~肩こった」
今井係長 「鈴木君、お疲れだろ? 肩揉んでやろうか?」
恵子 「え、いやぁ~、えぇ~っと・・・」
星野 「そろそろお昼休みだよ~ん」
と、昼休みのチャイムが鳴る。
恵子 「あ、ホントだ!小百合のオナカは電波時計並みね!」
星野 「エヘ! さ、お昼食べに行こう、恵子!」
恵子 「行こう、行こう!今井係長、失礼しま~す!」
シーン2
会社の社員食堂。
恵子と星野が食事をしている。
星野 「ねぇ恵子。いつまでガマンしてんの?」
恵子 「え、何の事?」
星野 「今井係長の事よ! あのセクハラオヤジ!!」
恵子 「あ~、あれね。いいのよ放っておけば」
星野 「ダメじゃん、そんな弱気じゃ! こないだだって恵子が給与明細渡される時、白衣のポケットにボンッって突っ込みながら身体触られてたの、部屋のみんな見てたよ?」
恵子 「実はこないだ労働組合のアンケートでさ、実名でセクハラされてますって報告出したんだけど・・・」
星野 「それで?」
恵子 「それが何もしてくれてないみたいなのよ」
星野 「ひっど~!! それじゃ組合費出してる意味無いじゃん!」
恵子 「私もなんとかしたいと思ってるんだけどさぁ~」
星野 「でもなんで恵子ばっかなのかしら。まるで同じ部署にいる私がペチャパイだって言われてるみたいで、失礼だわ!」
恵子 「アハハっ! 小百合ってば、今井係長にセクハラされたいの?」
星野 「まっさか~! あんなハゲオヤジ、1000万円もらってもやらせないよぉ!」
ガヤガヤと賑わう社員食堂。
片隅の男性社員達が恵子の方を見ながら、何かヒソヒソと喋っている。
男性社員達の口元と、楽しげに食事する恵子の口元が交互に映し出されるが、会話の内容は雑音で聞き取れない。
シーン3
昼休みが終わり、再び恵子の職場の品質管理室。
今井係長 「鈴木君、人事課から手が空いたらちょっと来てくれって伝言があったぞ」
恵子 「はい、分かりました。じゃあ今行って来ます」
シーン4
人事課室のドアをノックする恵子。
恵子 「失礼します。鈴木です」
深大寺課長 「おう、鈴木君。忙しい所悪いね。ちょっと応接室で話そうか」
恵子 「はい」
シーン5
応接室に入る恵子と深大寺課長。
ドアを閉める。
深大寺課長 「まあ掛けたまえ」
恵子 「はい、失礼します」
深大寺課長 「実はこれは内々の話なので、絶対に口外はしないと約束して欲しいんだが」
恵子 「はい、分かりました。何でしょう?」
深大寺課長 「今井係長が東北工場に移動になるんだよ」
恵子 「今井係長が、ですか?」
深大寺課長 「この決定は、君が労働組合に出した報告を私が汲み上げた物でもある。君には随分嫌な思いをさせたんじゃないかな?」
恵子 「・・・いえ。でもお気遣いには感謝します」
深大寺課長 「我が社では今後この様な事が起こらない様、万全の体制を取るつもりだから、どうか今後も頑張って我が社の製品の品質向上に努めてくれたまえ」
恵子 「はい、ありがとうございます」
深大寺課長 「ところで・・・」
恵子のソファーの隣に移る深大寺課長。
深大寺課長 「実は最近、社内に妙な噂が流れているんだが」
深大寺課長から少し距離を置いて座り直す恵子。
恵子 「妙な噂・・・ですか?」
深大寺課長 「どうも我が社の女子社員の中に、いかがわしいアルバイトをしているコがいるらしいんだが、君の周辺で誰か心当たりは無いかね?」
恵子 「いえ~~。そんな話は聞いた事はありません」
深大寺課長 「言うまでも無く、我が社は全国にマーケットを持つトップ企業だ。その様なスキャンダルはもっての他だから、君も気が付いたら報告してくれたまえ」
恵子 「はい、分かりました」
恵子の身体をジロジロ見る深大寺課長。
恵子 「あの、職場に戻ってもよろしいでしょうか?」
深大寺課長 「いいとも。今井係長の件はくれぐれも内密にな」
恵子 「失礼します」
シーン6
品質管理室に戻る恵子。
部屋の同僚達の視線が妙に感じられる。
恵子 「(独白)まさか・・・、バレたのかな?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます