第1章 小学校編

第3話 新たな人生

 冬も終わり春の暖かな陽気が近づき、桜が見頃を迎えた穏やかな日の朝に俺は目覚めた。


「あの出来事は、本当だったんだ!」


 しかし、喜びに浸るのはまだ早い!


 俺はしっかりと覚えている。


 俺はそれを確認するため、ベットから飛び起き、洗面所まで行って鏡を恐る恐る見た。


「うわっ!マジか!」


 そこには鏡を覗き驚いた表情をしている小学生になるかならないか程の年の美少年の姿があった。


 美の神から祝福されたような神秘的なその甘いマスクは全世界どこへ出しても恥ずかしくない物だった。

 俺はそんな顔を手に入れたのだ。


「よっしゃ―!」


 俺は嬉しさのあまり発狂した。


「これだけで、人生イージーモードだ。」


 俺は嬉しさのあまり、鏡に向かっていろんなポーズを決めて遊んだ。

 はたから見れば、超ナルシストだが今は多めに見て欲しい。


 一通りポーズを決め終わった時、キッチンから懐かしい声がした。


「蒼〜、ご飯できたよ〜」


 それは最近は随分と聞いてない懐かしい母の声だった。


 というのも、元の俺はニートになってから、ろくに親と会話もしていなかったからである。


 また、親もニートの俺を居ないものとして扱っていたから、親子の仲は冷戦時代のアメリカとソ連並みに冷え切っていた。


 そんな記憶が蘇り、少し緊張した面持ちでリビングに向かうとそこには俺の予想していた母には似ても似つかない、若い美女がご飯をテーブルに運んでいた。


 まさか、女神は母親まで美人にしてしまったのか?


 とりあえず俺は確かめてみることにした。


「あの、母さん?」


 するとその美女は少し可笑しそうにクスりと笑いながら言った。

「ふふ、どうしたの蒼、急に呼び方変えて、小学生になるからって。もうママって呼ばないの?」


 マジか、本当に母さんだった。


 この際呼び方はどうでもいいとして、それよりも重要なことがわかった。

 俺は小学一年生の頃に転生したらしい。 

 しかも、母さんの口ぶりから入学前だろう。

 よし、まずは母さんから俺の今の状況を確認していこう。



 ****



 よし、なんとなく今の俺の状況が掴めてきたぞ。


 説明すると、今は2007年の3月25日で、俺は6歳だ。

 そして、一週間後に小学校の入学式を控えている。

 通うのは前世と同じ地元の小学校だ。


 まあ、このくらい分かればどうにかなるだろう。

 そして、そんなことよりもっと重要な事を確認し忘れていた。


 それは、ステータスである。


 正直、顔のことで頭が一杯になってそっちまで頭がいかなかった。

 しかし、どうやって確認すればいいのだろう。


 とりあえず、ご飯を食べ終えて自分の部屋に戻った。

 そして、定番のアレを試すことにした。


 「ステータスオープン!!」


  すると目の前にスクリーンに投影された様な文字が現れた。


 ―――――――――――――――――

 佐藤蒼 6歳 男

 職業 : なし


 STR (体の強さ) : 10

 DEX (器用さ) : 10

 VIT (持久力) : 10

 AGI (敏捷性) :10

 INT (知力) : 10

 LUK(運) : 10

 CHA(魅力) : 99


 スキル : 才能 努力 根性

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 おおーー!本当に出来た!


 なるほど、こんな感じになっているのか。

 案の定、顔のお陰で魅力値だけが異常に高い。

 しかし、ぱっと見で分からないものがいくつかあるので、少し説明が欲しい所である。


 そんなふうに考えていると、俺が詳しく知りたいと思っていた所に説明書きが現れた。


 おおーー!まるで俺の考えがわかっているみたいだ。


<職業>職業設定中はその職業に関する能力が上がり易くなる。


<才能>あらゆることに対して素質を持ち、スキル習得し易くする。


<努力>向上心が上がり、あらゆることを極めることが出来る。

 また、継続して行なっている事柄の成長速度を高める。


<根性>困難を乗り越える不屈の心をもつ。


 職業に関してはまだ謎が多いが、3つのスキルに関しては、結構いい感じのスキルが集まっている気がする。

 しかも、才能の説明文から推測するに、まだスキルは増えていくのだろう。

 それに、あらゆることに素質を持っていて、それを努力と根性で極めていける。


 これらのスキルを使えば、前世で諦めた勉強やバレーボールだって上手くいくだろうし、そして、佐々木さんに振り向いてもらえるかもしれない。


 そんな素晴らしい可能性を秘めた自分のこれからの人生を思うとワクワクが止まらない。


「女神様、本当にありがとうございます。」


 そう天に向かって手を合わせ、お辞儀をした。

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