第4話 ピアノ教室
今、俺はピアノ教室にいる。
どうしてこんな所に居るのかというと、俺はピアノを始めることになったからだ。
なぜ?? と思う人も多いだろう。
実際、俺ですらこの展開を予想していなかった。
この経緯を説明するため、少し時間を遡らなくてはならない。
****
俺は入学式を明日に控え、少し焦っていた。
俺が転生して来てから一週間が経とうとしいるのだが、俺は自分が始める事を決め切れずにいた。
前世の後悔である勉強とバレーを始めればいいじゃないかと、思う人も多いかもしれないがそれが中々難しかった。
というのも、勉強は中学までの内容は理解しているから、俺がつまずき始めた高校の内容をやろうと思っても、家には教材は無く、親に買ってもらうにしても小学校入学前に高校の教材を頼むのは不自然すぎる。
また、バレーは俺が住んでいる所の近くには小学生のバレーボールチームが無かったこともあり、手軽には始められなかった。
そんな訳でどうしたものかとあれこれ考えている内にどんどん時間は過ぎ去っていってしまった。
そして、今日に至る。
あーー、どうしよう。
折角、女神様にスキルを頂いたのにこれでは宝の持ち腐れだ。
そんな時だった。
母が突然、面白い提案をしてきた。
「ねー、蒼。小学生になったら、ピアノでも習い始めない?」
俺は母の突然の提案に少し驚きながらも、ピアノもアリかもしれないと思った。
「うん!いいよ。丁度、何か始めたいと思っていたところだったし。」
「本当に!じゃあ、早速ピアノ教室に連絡してみるわ。」
そう言って、嬉しそうにスキップして行った。
俺はそんなに嬉しいのかと少し疑問に思ったが、それよりやる事が決まった安堵感の方が大きくあまり気にならなかった。
****
私は佐藤美咲、一児の母であり専業主婦だ。
そんな私の自慢は超イケメンの息子の母親であることだ。
その名は蒼という。
この蒼は本当に神が直接手を加えておつくりになったのではないかと思うほど、人間離れした容姿を持っている。
そのせいもあり、私は蒼にゾッコンである。
そんな私は最近、心配している事がある。
それは蒼が習い事を始めようとしている事だ。
もちろん、習い事を始めることはとても良い事だと思うが、その内容が不安だった。
その内容とはバレーボールだ。
もし、バレーで顔面にボールなどがぶつかって怪我でもしたらと考えると居ても立っても居られなかった。
だから、私は蒼がバレーを始めるのを何としても阻止しなくてはならない。
幸いにもこの近くには、小学生用のバレーボールチームはない。
しかし、それでも安心はできない。
何か、他の安全な習い事を始めさせて、完全にバレーから気を逸らそうと考えた。
そんな時頭に浮かんだのがピアノだった。
ピアノを始めさせれば、指を大事にする様になるし、結果的に蒼に危険は及ばなくなる。
しかも、ピアノを弾いている姿も見ることが出来る。
蒼がピアノを弾いている姿はさぞ格好いいことだろう。
習い事をピアノにすることは我ながらナイスアイデアだと思った。
そして今日、蒼に提案してみたところ、受け入れてくれた。
その時は嬉しさのあまり、スキップをしてしまった。
その勢いのまま近所のピアノ教室に連絡をしたら、今日から来ていいとのことだったので、早速蒼に準備をさせピアノ教室に向かった。
****
(そしてシーンは冒頭に戻る)
そのピアノ教室は俺の家から歩いて10分くらいの住宅街にある一軒家だった。
そして、今俺と母親はピアノ教室の中で先生から説明を受けていた。
その説明はこの教室の方針や月謝などが主な内容だった。
先生曰く、この教室はピアノを好きになってもらうことを目的とし、生徒の進度に合わせて教えていくらしい。
先生は幼い頃、コンクールを目指した厳しい指導を受けていたそうだが、確かにそれで上手くなり、コンクールで入賞なども出来たらしいがピアノが好きかどうか分からなくなってしまったことがあるらしい。
だから、先生自身はコンクールを目指すような厳しい指導は行わないらしい。
でも、生徒自身がコンクールを目指したいと言うなら全力でサポートする様にしているらしい。
そんな話を一通り聞いて、いよいよピアノレッスンが始まった。
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