33話 【ユリウスside】オークジェネラルだと!?

 ロイの復帰勧誘に失敗したユリウスたち”黒き炎”。ロイ抜きで、引き続きジョネス商会の隊商の護衛を行っている。


 今の彼らでも、Dランク程度の魔物であれば倒すことはできる。Cランクの魔物でも、1匹だけであればギリギリだいじょうぶだ。強力な魔物が出ないことを祈りつつ、道を進んでいく。


 もちろん、ジョネス商会長は彼らの不調を把握している。念のため追加の護衛パーティを雇ってある。Cランクパーティが2組だ。これなら、多少手強い魔物が出てきてもだいじょうぶだろう。


 隊商は道を進んでいく。しばらくして。


「オークが3匹出た! 各パーティで、1匹ずつ撃破してくれ。ユリウス! しっかり頼むぞ!」

「はっ! ……お前たち、行くぞ!」


 ジョネス商会長の指示を受け、ユリウスがパーティメンバーに対してそう言う。


 ユリウス、ルフレ、ガレン、リサ、シオン。5人で1匹のオークに対峙する。あとの2匹とは、それぞれ別のCランクパーティが対峙している。


「はああっ!」

「ぬうんっ!」

「……貫け、氷槍! アイシクル・スピア!」


 彼らはオークに順調にダメージを与えていく。少し前よりも、力が入っている。彼らには、もう後がないのだ。


「……これでとどめだ。火炎斬!」


 ユリウスが剣に炎をまとわせ、オークに攻撃する。


「グ、グアァッ!」


 オークがそう声をあげて、倒れた。これにて戦闘終了だ。


 ユリウスをホッとひと息つく。周りを見ると、他のパーティもオークを倒してところだった。これで無事にひと段落だ。そう思ったのもつかの間。


「オ、オークジェネラルだ! ぐわああぁっ!」


 他のパーティのうちの1人が、そう悲鳴をあげて倒れる。通常のオークよりもひと回り大きなオークが出現した。

オークジェネラル。オークが突然変異で成長したBランククラスの魔物である。


「ひ、ひぃぃ!」

「こ、こんなの、Cランクの俺たちが勝てるわけねえよ! 逃げろ!」

「ま、待ってくれ! あ、足が震えて……」


 Cランクパーティの面々が、恐慌状態に陥る。無理もない。彼らからすれば、オークジェネラルは格上の魔物なのだ。


 オークジェネラルが、逃げ遅れた1人の冒険者に対して近づいていく。棍棒を振り下ろす。彼の頭に棍棒が近づいていく。もうダメか。だれもが思った、その時。


「……く。さっさと逃げろ! 無能が!」


 ユリウスがオークジェネラルの棍棒を剣で受け止めた。彼の実力はロイの支援魔法によってかさ増しされていたとはいえ、彼らがBランクパーティとして活動していた経験が消えてなくなるわけではない。オークジェネラルであれば、今まで何度か討伐したことはある。ーーただし、もちろんそのときとは決定的に異なる点がある。


「ガアアアッ!」

「ぐはっ!」


 オークジェネラルが棍棒に込める力を増し、ユリウスを弾き飛ばす。そう。今の彼には、ロイの支援魔法の恩恵がない。今の彼は、身の丈に合わない自信と経験が身についた、ただの低ランククラスの魔法剣士である。


「ユリウス殿!」

「ユリウスさん!」


 ガレン、ルフレ、リサ、シオン。彼らがユリウスのもとへ駆け寄る。他のCランクパーティや依頼主のジョネス商会長は、既に撤退の構えである。


「ちっ。俺としたことが。つい、いつもの癖で体が動いちまった。こりゃ、助からねえかもな……」


 ユリウスが諦めたような顔でそうこぼす。しかし。


「諦めるのはまだ早いのである! 吾輩たちの真の実力を発揮するのである!」

「その通りですね。自分も、今こそ全力を解き放ちましょう」

「わたくしも、決死の覚悟で攻撃魔法を放ちますわよ」

「ボクだって。弓で援護するよ」


 ガレン、ルフレ、リサ、シオン。みんなで、徹底抗戦の構えだ。既に、他のCランクパーティやジョネス商会長たちは撤退済みである。


 ユリウスたちが生き残るためには、自力でオークジェネラルを退ける必要がある。はたして、彼らにそれができるのだろうか。

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