34話 【ユリウスside】なあに。後からすぐに追いつくさ

 ”黒き炎”とオークジェネラルの戦いは、最初は互角だった。


 ユリウス、ルフレ、ガレン、リサ、シオン。5人で1匹のオークジェネラルに対峙する。他のCランクパーティやジョネス商会長は、退避済みだ。


「はあっ!」

「ぬんっ!」

「……貫け、氷槍! アイシクル・スピア!」


 ”黒き炎”はオークジェネラルに順調にダメージを与えていく。だが。


「ブモオオオッ!」


 オークジェネラルが大きな声を発し、威嚇する。


「ぐっ!」

「ひっ!」


 ロイの支援魔法がない今、彼らはオークジェネラルの威嚇に耐えられない。身をすくませてしまう。そして。


「ブモオオオッ!」

「ぐあああああっ!」

「きゃあっ!」


 オークジェネラルが棍棒を横薙ぎする。ガレンが大きなダメージを負う。さらに、リサも衝撃波により少しのダメージを負った。


「ちっ。マズイな……」


 ユリウスは、冷静に状況を把握する。ジョネス商会長たちは、既に姿が見えないほど遠くまで撤退している。この状況からであれば、ユリウスたちも撤退を選択してもいいだろう。問題は、逃げ出す獲物をオークジェネラルがやすやすと見逃すかということだが。


「撤退するぞ! ルフレはガレンに手を貸してやれ! リサとシオンは自力で走れるだろう!」


 ユリウスが大声でそう言う。


「承知しました。さあ、ガレンさん。行きますよ」

「かたじけないのである」


 ルフレがガレンに手を貸し、オークジェネラルから離れていく。


「ボクたちも撤退しましょう」

「わかりましたわ。……あの、ユリウスさんは?」

「俺はしばらくこいつを引きつけておく! なあに。後からすぐに追いつくさ」


 ユリウスがそう言う。オークジェネラルは多少のダメージは負っているものの、まだまだ戦闘可能だ。この状態で5人で撤退しても、すぐに追いつかれるだろう。だれか殿が必要だ。


「ユ、ユリウスさん。お気をつけて……」


 リサは心配そうにそう言いつつ、シオン、ガレン、ルフレとともに撤退していった。


「ブモオオオッ!」


 逃げる4人を見て、オークジェネラルがそう叫ぶ。せっかくの獲物を逃さないと言わんばかりだ。オークジェネラルが4人を追うそぶりを見せる。しかし、ユリウスの剣がそれを制止する。


「へっ。お前の相手は俺だ。かつてはAランク間近とも言われたこのユリウスの力。見せてやろう」


 ユリウスがそう言う。しかし悲しいかな。彼の実力では、オークジェネラルに勝つのは厳しい。あとは、どの程度時間を稼げるかという話である。理想は、ある程度の時間を稼いだ後、彼自身もなんとかスキを見て逃げ出すことであるが……。はたして、彼はこの窮地をどうにかできるのだろうか。

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