第9話 またひとりぼっち

サクラは悪夢から目覚めました。ぼんやりとした暗がりに、いっしゅんあの出来事にとらわれそうになりました。

 でも、ユキの匂いがどこからかして、サクラは安心しました。

 そうです。もう一匹ではないのです。だいじょうぶです。

 あっちっちの頭に、そう呼びかけます。

 そうして、となりの様子をうかがうと、

―ユキがいません!

「……ユキ?」

 サクラの声はふるえました。頭では何も考えられません。体がガタガタふるえ、体の熱が急に上がってきました。

 サクラが必死で顔をあちこちに向けると、外の景色に何かが見えました。

 吹雪の中、まりのようにポンポンとびはねる白いかたまりが、遠くへ行ってしまいます。ユキでした。

「ユキ。」 

 サクラの力が、ふうっと抜けていきました。

(ユキまで……あたしをおいていくの。一匹ぼっちにして、どっか行っちゃうの? お願い、戻ってきて。行かないで)

 頭はもうろうとして、やみに再び包まれていく感覚の中、サクラはずっとユキを呼び続けていました。

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