第8話 悪夢

サクラは夢の中をさまよっていました。

「ユキ! ユキ!」

 叫んでも、叫んでも、サクラの声は誰にも届きません、

 声がはんきょうして、それが暗やみにすいこまれていきます。サクラの周りも、だんだん黒くそまっていきました。

 そして気づくと、サクラはおりの中にいました。

 真っ暗で、じめじめしています。恐怖の匂いが、たえずサクラの鼻をつんとさせます。

 助けて。

 ずっとそう叫んでいました。

 お母さんが、お父さんが。……お兄ちゃんや、お姉ちゃんが、助けに来てくれる。

 願っていました。

 けど、ここにいるうちに、サクラの光は消えていきました。かわりに、大きなやみが、視界を埋め尽くしていったのです。

 それは、何度もおとずれました。

 伸びてきた人間の手。

 痛みが体中をつんざき、おぞましさが悲鳴となります。

 涙が、かってにこぼれおちます。

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