第7話 熱

 そんなある日、サクラは熱をだしてしまいました。

 小さな土の巣穴の中でねこむサクラを、ユキがかんびょうしてくれます。

「サクラ、だいじょうぶ?」

 やさしい声が、頭の上にふってきて、サクラをおちつかせてくれます。

 すっかりなじんだ、冷たいユキの舌が、ぺろっと熱を冷やしてくれます。

 サクラはとても安心でした。お母さんが側にいてくれた時のことを思いだすような、そんな心地でした。

 しかし、サクラの熱は一向に引きませんでした。

 ユキはずっとずっと、サクラの側にいました。

 ユキは不安でした。 

 初めてできた友だちを失ってしまうことが。元気で、明るい笑顔で笑う、大好きなうさぎと別れたくありません。

 そんなユキの不安を表すかのように、二匹の住む山全体を、雪がすっぽりと包んでしまいました。

 真冬のいてつく寒さは、巣穴にもふぶいてきます。

 燃えるように体がほてったサクラには、とっても気持ちのよいものでした。まるで天国のようです。

 でも、ユキにはいけないことだとわかりました。

 ユキにとっては、寒さは平気ですが、サクラは元々毛がうすいようなのです。寒さには弱そうで、よくくちゅんとしていました。

「サクラ、……サクラ!」

 ユキが呼びかけても、サクラは目を覚ましません。ユキがサクラのおでこをなめると、舌がやけどしそうなくらい熱いです。

 ユキは外を見ました。

 大粒の雪が、雪合戦みたいに飛び交っていました。

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