第5話 友だち

「あたし、サクラ。よろしくね!」

 二匹で顔をあわせます。

「サクラ……。」

 その子は口の中で、サクラの名をつぶやきます。

「あなたのお名前は?」

 サクラがたずねると、その子の緑色の耳が、驚いたようにはねます。

「……えっと。」

 もごもごと口を動かしていましたが、やがて言います。

「ユキ。」

「ユキ。そっか、ユキはまっしろだもんね。ぴったりの名前だね!」

 サクラがほほえむと、ユキはうれしそうにうなずきました。

「うん! ありがとう。」


 それから二匹の楽しい日々が始まりました。

 毎日ずっと一緒です。

 雪原でかけっこしました。

 自分たちの巣を作ったり、草をはんだり、ひなたぼっこもしました。

 サクラは新しい友だちができて、楽しい毎日がすごせて、とても幸せでした。

 ユキはやさしいです。そして、少しふしぎなうさぎです。

 それは例えば、こんな感じです。

 ユキが雪の坂を転げおちた時、ひとまわり体が大きくなったのです。たぶん、サクラの二倍くらいに。逆に、日なたぼっこをしたときは、ひとまわり小さくなります。

 さらに、雪ばっかはんで、ご飯はあまり食べません。その「あまり」も、ユキは草を食べるふりをしていました。サクラはそれを、見て見ぬふりをしました。ユキにも何か秘密があるようです。

 ユキは、サクラが知るようなうさぎとは全然ちがいましたが、サクラはあまり気にしませんでした。それがユキだとなっとくできたからです。

 何より、そばにいてくれるだけで、ユキはサクラのかけがえのない友だちなのです。

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