第4話 あっかんべ

「だいじょうぶ?」

 まっしろうさぎに声をかけます。

 子どもたちはどこかへ行ってしまいました。サクラはその間、何もすることができませんでした。

 その後、サクラは急いでかけより、何度も呼びかけましたが、反応はありません。

(……し、死んじゃったの。)

 サクラはこわくなりました。体がさっきと同じようにびくびくします。

 その時また、ふしぎな音がしました。

 サクラははっと、あたりを見回しましたが、今度も誰もいません。ただ、まっしろうさぎがサクラの目の前にいるだけです。

「もしかして……。あなたの鳴き声?」

 サクラはうさぎをじっと見ます。たしかに、ふしぎな音はこの子から聞こえました。

 うさぎはまだ動きません。

 サクラはそっとその子の顔をのぞきこんで、ぺろっと舌でなめてみました。

 すると……。

「ひゃあっ。つめたいっ!」

 サクラはびっくりしてのけぞりました。

 あまりにもその子の顔が氷のように冷たかったのです。舌が凍ってしまいそうです。火傷したみたいな冷たさに、舌をあかんべえとだしていると、急に雪がサクラめがけて飛んできました。

「ひゃあっ!」

 サクラは二度目の悲鳴をあげ、ふりむきます。

 まっしろうさぎの赤い目と、ばっちり目が合いました。その子が体にのった雪を、体をゆらして、ふりまいていたのです。

 二匹は目をあわせ、棒立ちになります。先にその子が動きました。ふふっと笑いはじめました。サクラもぷぷっと吹きだしてしまいました。

 じつは、サクラは舌をあかんべしたままだったのです。

 サクラは初めて会った子にそんな恥ずかしいところを見られて、穴を掘ってかくれたい気持ちでしたが、その子があんまりにも笑うものだから、まあいいやと思ったのでした。

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