09話.[よくないだろう]

 廿楽さん達とまた集まっていた。

 修学旅行のときのメンバー及び肥田くんという感じになっている。

 つまり恋人達の集まりの中に空気を読めずに存在しているということになる。

 ま、誘われたんだから気にせずに存在していればいいんだけども。


「菜月、ほらよ」

「ありがとう」


 で、何故か肥田くんとふたりきりになっていた。


「もう三年だな」

「うん」


 暖かくなってきていて外でゆっくりしていると眠たくなるぐらいの気温で。


「朔さん達とは仲直りできたんだよな?」

「うん」


 朔くんとは家でふたりきりなわけだからもうあんな感じにはしたくない。

 智くんもときどきではあるけど泊まってくれるようになったから問題ない。

 ただ、彼女さんと暮らしているはずなのに大丈夫なのかなと不安にはなるけど。


「廿楽さんとはどうなの?」

「普通だな、そもそも喧嘩とかしたことがないから」

「そっか、いい関係を築けているようでよかったよ」


 こっちは結局、付き合っているとかそういうのではないから。

 相手は兄だし、それに近くにいてくれるからそれでいいんだけどね。

 一緒に寝たくなったら寝させてくれるから少しは変わったのかもしれない。


「やっほー」

「あ、どこに行ってたの?」

「まあまあ」


 廿楽さんはいつもこんな感じだ。

 狙っていないけど恋人を他の異性と過ごさせていいんだろうか?

 取られないという自信があるのなら結構だけどね。


「菜月さん……」

「ん? どうしたの? 鷲見くんにしては珍しい感じだね」 

「……海がいつまで経っても名前で呼んでくれないんだ」


 あー、そういえば恥ずかしいって言っていたもんな。

 もう二ヶ月以上経っているのにそのままではよくないだろう。

 だけどその海ちゃんは廿楽さんに張り付いているだけ。


「海ちゃん」

「……菜月さんに言われてもこれは変わらないから」

「「えぇ」」


 こうなったら仕方がない。


「廿楽さん――」

「名前で呼んでくれないと協力しない」

「凛、海ちゃんをどうにかして変えよう」

「いいね、見ていてこっちがもやもやするからね」


 名前で呼ばなかったからということで別れることになったら嫌だろう。

 全部受け入れろなんて言うつもりはないから名前でぐらいは呼んであげてほしい。


「海」

「……ま、まこ……やっぱり無理っ、帰るっ」

「「「あっ!」」」


 こういうのはその人のペースでやらせることだとはいっても限度がある。

 だって恋人同士なんだからさ、まあもう行っちゃったからあれだけど。


「ま、そう無理させるなよ」

「そうだね」

「鷲見も残念がらないようにね」

「うん、ゆっくり待つことにするよ」


 鷲見くんがこう言っているならもう仕方がない。

 そういうものだと片付けておこうと決めたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る