第11章 幻の島 2

怪物の口のように裂けた山のトンネルの入り口が、シーたち四人を待ちかまえる。白い山同様、奥まで続くトンネルも真っ白だった。その白が闇に染まっていく瞬間が少し恐ろしくシーには思えた。

「やっとだな」サンがいう。

「うん、ついたね」シーはうなずく。

それから、真珠の髪飾りを取り外した。手にしっかり握って、入り口を見すえる。覚悟は既に、胸の中にある。

「みんな」

くるりとふりかえって、シーは一人一人の顔を見る。

「ついてきてくれてありがとう。船旅の時の私は役立たずで、大したことできなかったけど……みんなが頑張ってくれたから、ここまでこれた。サンの舵取りとか、カイが船をこいでスピード速めてくれたり、ヤドはおいしい料理を作ってくれた。ここにはいないけど、スピンは危ないところやサメが来た時にいち早く教えてくれた。みんなすごくて、かっこよくて、たくさんのこと私に教えてくれた。とても楽しかった。本当にありがとう」

シーは深々と頭を下げる。感謝の気持ちでいっぱいで、全部伝えきれない。旅についてきてくれるだけでシーにはとても心強かったのに、みんなで協力してここまでこれたのがすごく嬉しい。

「俺も楽しかった。こちらこそ、ありがとう」

サンがシーの肩に手をぽんとおいた。顔を上げると、サンが太陽のような眩しい笑顔で笑っていた。

「姫さまのお役に立てたなら光栄です」

カイが深く礼をする。口元が嬉しそうに笑っている。シーがほほえみかけると、カイは素顔のいたずらっぽい笑みを見せた。

「僕、船でみんなと過ごした時間が人生で一番楽しかったかも。家族みたいに、僕のこと受け入れてくれてありがとう」

 ヤドが涙ぐみながらそう話す。

 不思議と、おだやかな雰囲気があたりを包んだ。今から島の運命をかけて挑みにいくというのに。でも全然ありえないことのように、シーには思われた。

 ずっと昂っていた感情が、ようやく一つのところにとどまる。

「さあ、行こう」

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