7-4:終わる命
「リリオさん!」
ヴィオレッタの駆る馬から飛び降りて、サフィリアはあぜ道に倒れるリリオに走り寄った!
昼夜を問わず馬を走らせ、戻り着いたカラナの故郷。
出発前に見た緑豊かな農村は――炎の赤と、燃え落ちた
見た覚えのある家々は
そして今――目の前には、泥だらけになって
右腕の腕輪は魔導石ごと破壊され、無抵抗で攻められた様子が
首を締め上げられたのだろう。
大きく口を開き薄く目を開いたままの顔が、異様な方向に
「……そんな……!」
サフィリアはリリオの横に
だが、それが分かったところで、どうしようもない……。
サフィリアもヴィオレッタも、この傷から蘇生させる様な
いずれ、リリオの身体は温かみを失い、硬くなって行くだろう。
「サイザリス様、お気を確かに……」
「離せッ!」
ヴィオレッタの腕を振り払う!
彼女に向き直り、激しい剣幕で
「あんたの……あんたの教団が送り込んだ『ゴーレム』が……カラナの村をこんなに……!」
ヴィオレッタに掴みかかるサフィリア!
だが、その背後の半壊した民家の裏側から激しい炸裂音が響き、遅れて土煙が立ち
「!」
誰かがまだ闘っている!
立ち上がり、民家の裏側へ走り込む!
まだ逃げ遅れた人がいるならば助けなくてならない。
土煙を
「クラル!」
少女の名を叫ぶ!
サフィリアに気付き、くるりとこちらを向いたクラル。
その顔は――
他の『ゴーレム』同様、
一歩遅れて、ヴィオレッタが煙の中から姿を現す。
「お願いヴィオレッタ! クラルの
サフィリアが掴みかかるが、ヴィオレッタはにこにこするだけで何の反応もしてくれない。
「ちくしょう!」
ヴィオレッタを突き飛ばし、クラルに駆け寄る!
両手を広げて声を張り上げた!
「お願いクラル、目を覚まして! リリオさんを助けて!」
ちからいっぱい叫ぶ!
しかし、そんなサフィリアの言葉も
手にした
「きゃあッ!?」
杖を振りかざして、直接殴りかかってくるクラル!
迎撃する事は
繰り出された攻撃を錫杖で受け止め、杖を握るその腕を掴む!
「やめて!
サフィリアの叫びを無視し、彼女の脇腹に
「がはッ!」
腹をまともに蹴られ、両腕で押さえて後ろに下がる。
自由になったクラルも後ろに飛び退きながら、再び"
「ちくしょうっ!」
"
しかし、いくら接近したところで、サフィリアにクラルを攻撃
こうなれば手段はただひとつ。
クラルの
その為にはクラルの動きを封じ、錫杖の魔導石でクラルの
しかも、あまり時間をかけてもいられない。
早くしなければ、リリオを蘇生出来なくなる……!
意を結して、サフィリアは走り込む!
迫りくる"
すべては防ぎきれず、肩に脚に直撃して皮膚を焼き、頬をかすめて行く!
「この……ッ!」
"
なおも止まらない連弾がまともにサフィリアの身体を撃ち続ける。
口から血が逆流しても意に
”マギコード”が、額の魔導石に
それは、以前に解いた時よりはるかに複雑で二重・三重に仕掛けられている。
そうしているあいだにも、クラルの"
皮膚を破り、肉を裂き、
――耳のイヤリングが弾け飛ぶ!
やがて―――
二人のあいだで膨張した魔力が破裂し、
「きゃあッ!」
二度三度と地面を転がる!
頭を振って、サフィリアはゆっくりと立ち上がった。
"
爆心の反対側では、クラルがゆっくりと上体を起こすところだった。
頭を軽く振って、こちらに顔を向けるクラルに――思わず身構える――!
「……サフィリア……!」
感情の
「クラル! 良かった、
「それよりも……! 村の人たちを治療しなければ!」
ふらつきながら立ち上がり、青ざめた表情で辺りを見回すクラル。
燃え盛る村を見回し、凍り付いた表情で立ち
「他の人はほとんど逃げちゃった! 向こうの通りでリリオさんが倒れてる!」
クラルを連れて、リリオの元に戻る。
泥まみれで倒れたリリオの姿を見て、顔を手で
「わたし……何て事を……ッ!」
「早く! まだ助けられるよ!」
クラルは我に返って、
サフィリアが祈る様にリリオの手を握る。
その手はすっかり冷たくなってしまっていた。
肉体を復元しても、戻って来ないかも知れない……。
やがて、首の骨折も含めたすべての傷が
「……良かった……!」
「ありがとね、クラル」
「何を……言っているの……!?」
ぺたんと座り込み、両手に顔を
「わたし……カラナの村を……焼いてしまった……!
どうしよう……! 取り返しのつかない事を……!」
肩を大きく震わせて、クラルは泣いた。
「サフィリアも……守れなかった……!
『封印の間』で起きたこと……全部覚えてる……!」
サフィリアは目を閉じた。
ヴィオレッタへの激しい怒りがこみ上げる。
カラナとの
「クラルが悪いんじゃないよ。ヴィオレッタのせいだ……!」
そっと、クラルの肩に手を置く。
涙でくしゃくしゃになった顔を、クラルが上げる。
「でも、クラルが"
サフィリアの言葉に、クラルは微笑んで強く
「さあ、教えて! "
「それは――」
クラルの唇が、その"言葉"を
そのすべてが終わらぬ内に――
――――クラルの背中から胸を、長大な刃が
赤い
サフィリアの顔に、クラルの胸から噴き出した真っ赤な血しぶきが飛び散る!
頭から地面に崩れるクラル。
見上げれば、そこに
「おのれ……『ゴーレム』! よくも、村を焼いてくれたな!!」
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